新年度といえば、気持ちも新たに気合が入るものだが、30年以上の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏は、FX(外国為替証拠金取引)は4月からの年度初めの為替相場には用心するよう指摘している。それはどういう意味なのか、水上氏が解説する。
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4月になって新年度入りすると、気持ちも新たに「さあやるぞ!」ということになり、急に世の中が変わったかのように思いがちですが、実はすぐに変わりません。
為替の世界で言えば、実需の自動車企業や石油会社など輸出入企業や、資本移動を促す生保など機関投資家が、新しい年度にどういう方針を取り、その結果、どういったフロー(資金の流れ)が出てくるのかによって相場の方向性はかなり変わってくるわけで大変重要です。
では、こうした方針はいつ決まり動き出すのかと言えば、実は早くて4月の後半です。ですから、4月後半までは実需も資本筋も基本的には大きく取引するようなことはありません。
それが意味することは、4月初めから後半までのマーケットには、投機筋だけがいるということです。米系ファンドなど、大きな投機筋は実需の何十倍もの資金を動かして、マーケットを意のままに操っているという話がよくあります。確かに時としてそれは正しいかもしれません。しかしそれは常ではありません。
◆投機筋が作るジェットコースター相場
実需と投機筋の違いは、実需は、たとえば輸出企業であれば、製品を輸出し、代金を海外から外貨で受取りますが、外貨のままでは国内では使えませんのでその外貨を円に換えて為替取引は完結します。つまり輸出企業は外貨を売り放しで取引を終え、また輸入企業は逆に外貨を買い放しで取引を終えます。
それに対して、投機は売ったら必ず利食いか損切のために買わなければならないし、買ったら必ず利食いか損切のために売らなければ、ポジションが解消されず、為替リスクを負ったままになります。ですから投機はいくら粋がって売っても、いずれどこかでは、買ってきますし、いくら粋がって買っても、いずれどこかでは、売ってきます。これが、投機筋の最大の弱点です。
尚、機関投資家はある意味、期間の長い投資という名の投機だと言え、基本的には外貨買い先行で、いずれどこかでは売らなければなりません。ですので、4月後半までの投機筋だけの相場は、上げれば下がる、下がれば上がるというジェットコースターのような相場に、投機筋同士が疲弊する消耗戦となりがちです。
このようにマーケットでは投機筋が、あたかも剛腕を振るっているような印象を受けますが、実はつらい目にも結構遭っています。いずれにしても、4月も始めから後半までは、どうしてもという理由がない限り、極力マーケットに参入しないことが必要な事だと思います。
※マネーポスト2016年春号