色気は売っても心までは売ってはいけない──こんな133の警句が並ぶ冊子が話題だ。大阪・北新地社交料飲協会の初代理事長(故人)が1980年に作った「ホステス心得帖」は昨年11月に再出版され、版を重ねている。男が読んでもためになる「お水の教科書」から、「お客様との私的交際」の章を紹介しよう。(全10回)
(1)お客様の社会的立場を、私的なことに利用しないこと。たとえ、お客様が申し出られても、スグ飛びついて甘えないこと。
(2)約束した事は、どんな些細な事でも必ず守ること。特に時間は厳重に守ること。気まぐれは厳禁。
(3)実行できそうもない約束は、初めからしないこと。お客様をスッポかした話を、客席で平気でしている無神経なホステスは最低。
(4)誘われた時、相手を傷つけることなく断るための理由を、予め幾つか用意しておくこと。
(5)言いたくない事は言わなくてよい。しかし、ウソはダメ。
(6)お客様のお金だからといって、ムダなお金を平気で使わせないこと。気前のいいところを見せたがるお客様ほど、その使ったお金が幾らだったか覚えておられるものである。使ったお金が多いほど、別れ話はもつれるものだ。気のない相手には、お金を使わせない配慮が必要。
(7)ムヤミにねだらないこと。ねだる以上、それに見合う代償・見返りを期待されると覚悟すること。その気がない客に、ねだらないことが大切。
(8)お客様にお金を使わせた時は、キチンと謝意を表すこと。当り前のような顔はダメ。食事をご馳走されても「ご馳走さま」と言えないホステスがいる。「ありがとうございます」の気持ちを素直に言えないのは、育ちの悪い証拠。
(9)特定のお客様と親密になったからといって、それを店内で態度に表わしてはいけない。もしお客様が態度を変えたら、たしなめること。たしなめても改められないお客様ならば、親密にならないこと。また、なる値打ちのない男である。
(10)男の最低の姿を見て、すべてを判断するな。男は、その人が思っているほど立派ではないが、ホステスが考えているよりは高級である。
(11)自分の彼氏を、客にしないこと。
(12)お客様から法外なチップ、または小遣いをもらう時は、それに相当する期待をお客様はしているものである。何もないのにお金をくれる人はいない。
※週刊ポスト2016年4月8日号