来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げが凍結される可能性が強まっている。現在、日本経済の足を引っ張っているのが、GDPの6割を占める個人消費だ。そもそも消費税率が上がると増税分が商品価格に転嫁され、国民の実質所得が減って購買力そのものが下がる。
2014年4月、消費税率が5%から8%に上がってからの「消費増税デフレ」で日本の消費はリーマン・ショックの時より大きく落ち込み、安倍晋三首相の前回の増税先送り後も立ち直ることができないままだ。
第一生命経済研究所の永濱利廣・主席エコノミストは今回、消費増税が凍結されると3年ぶりに消費の回復が期待できると指摘する。
「来年、消費税率が10%に引き上げられると、食品への軽減税率が導入されても国民全体で4.4兆円の負担増、平均すると家計の負担は1世帯あたり年間4万6000円増えます。増税延期はその分が軽減されるので消費に大きなプラスになる。
ただし、消費税の引き上げが1~2年の短期間先送りされるだけであれば、消費者は『どうせすぐ上がる。節約しておかなきゃ』と考えて買い控え、効果はそれほど期待できない。その点、増税の凍結が決定されれば当面、税率は上がらないから消費者は安心してお金を使えるようになり、消費マインドがはっきり上向く。GDPを0.8%押し上げるでしょう」
それだけでもマイナス成長からの脱出が実現する。消費回復は企業業績を一段と上向かせ、実質所得が減り続けている国民への本格的な賃上げラッシュにつながる。
消費増税凍結で真っ先に効果が現われるのが為替市場だ。外為オンラインのシニアアナリスト・佐藤正和氏はこう予測する。
「消費増税の凍結となれば景気は持ち直し、物価も上がる。インフレは明らかに円安要因で、安倍首相が発表した瞬間から市場は大きく円安に動き、一気に5~6円の円安に振れる可能性が高い。中長期的にはもっと円安が進んでいきます」
現在の1ドル=約112円(3月22日)の水準でいえば、サミットを機に首相が増税凍結を表明すれば118円までいきなり動き、その後、120円を突破していくという流れが予想されている。
※週刊ポスト2016年4月8日号