安倍晋三首相の最側近である萩生田光一・内閣官房副長官は、対北朝鮮外交への関心が強いことで知られている。そんな彼が怒りを露わにしたのが、北朝鮮が今年2月、長距離弾道ミサイルの発射実験を行なったときだった。もっとも怒りの矛先が向いたのは、北朝鮮に対してではなかった。永田町関係者が語る。
「ミサイルの発射から30分も経たずに首相官邸には政権幹部らが集まりましたが、官房副長官のなかで萩生田さんが最後の到着になってしまい、大慌てで危機管理センターに入ったそうです」
事件はそのとき起こった。萩生田氏は、急いで椅子に座ろうとした拍子に、机の引き出しに膝を強打してしまったというのだ。萩生田氏は3月16日に行なわれた総合危機管理学会設立総会の挨拶で、そのときの様子を自ら語っている。
「ものすごく痛くて動けないほどだったんですね。で、そもそもなぜ危機管理センターに引き出しが必要なのかという議論から始まって、ここに集まる人は書類をたくさん持ち歩いていないし、引き出しは全く必要ないじゃないかと。痛みに任せてですね、その引き出しを全部外せと指示したところなんですけども。細かいことかもしれませんけど、そういった体験の中から日本の危機管理というのは少しずつ上がっていくんじゃないかと、こう思っております」
ところが首相官邸に訊くと、「引き出しを撤去した事実はない」とのこと。
萩生田氏の事務所に尋ねると、「引き出しに足をぶつけたのは事実です」と“自損事故”を認めたうえで、「撤去を指示した事実はありません。(総会の挨拶は)自虐的な失敗のエピソードを披露し、一切の手荷物を持たずに入室するセンターに引き出しは必要か? という感想を付して身近なところに危機は存在するという内容でした」という。
では、「外せと指示した」というのは作り話だったのか。まァ、「引き出し」という“仮想敵”に打ちのめされた萩生田氏自身の危機管理能力もちょっと心配。
※週刊ポスト2016年4月8日号