4月2日にいよいよ最終回を迎えるNHKの連続テレビ小説『あさが来た』。波瑠演じる主人公・あさのモデルとなったのは広岡浅子だが、史実では浅子の夫・信五郎が、浅子が実家から連れてきた女中・小藤を妾にした。そして、小藤は4人の子供を産んでいる。しかし、『あさが来た』では、あさの夫・進次郎(玉木宏)は妾を作らなかった。それはどうしてなのだろうか? 脚本を担当した大森美香さんがその理由を説明する。
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お妾さんは、最初から出さないと決めていました。視聴者に共感してもらうことは、ドラマにとって大変必要な要素です。特に朝ドラにはそれがいえると思います。
お妾さんのことを書くならば、さらっと登場させるのではなく、どんなふうに新次郎さんと出会って、あささんや新次郎さんがどう決断するかをしっかり書く必要が出てきます。
史実では、浅子さんが嫁ぐときに一緒にやってきた女中さんがお妾さんになります。浅子さんは、知らない人がお妾さんになるのを嫌がったんですね。ドラマに置き換えると、うめさんになります。ネットでは、ふゆちゃん(清原果耶)と言われていたようですが、私の中ではうめさんでした。
このあたりの心情をきちんと考えて書かないと、あささんやうめさんの気持ちを踏みにじることになります。しかし、そこを丁寧に書くことは、かなりのボリュームになる…。
すると、あささんの仕事のこと、夫婦愛、家族の関係など、この物語のメインテーマを書き切れなくなってしまいます。ですから、書かないと決めました。
それに、このドラマを見てから、元気に会社や学校へ行ってもらいたいと考えたとき、あまりお妾さんの話に比重を置かないほうがいいだろうとも思いました。
ただ、とても興味深いテーマなので、いつか挑戦してみたいです。もし“夜の連続テレビ小説”ができたなら、そこで書いてみたいです(笑い)。
※女性セブン2016年4月14日号