大人気のうちに最終回を迎えるNHK連続テレビ小説『あさが来た』。なかでも、五代友厚を演じたディーン・フジオカは、このドラマで一躍お茶の間の人気者になった。劇中で亡くなると、悲しみに暮れる女性が続出。「五代ロス」という言葉まで生まれた。五代友厚というキャラクターについて、脚本を担当した大森美香さんが解説する。
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私は朝ドラは『ちゅらさん』(2001年)が好きだったんです。ヒロイン恵里(国仲涼子)の弟・恵達を演じた山田孝之さんが、このドラマをきっかけにブレークしたと思います。
そうした朝ドラからすてきな俳優さんを発見する楽しみや喜びを『あさが来た』でも味わってもらいたかったんです。なので、すでにテレビで活躍している役者さんではなく、歌舞伎などの伝統芸能や音楽、スポーツで活躍している人から探しました。
自分でそうした有名人の名簿みたいなサイトを見つけて、何百人と調べました。気になった人がいたら、事務所のページにアクセスして、その人の写真や動画を見て地道に調べ、NHKの制作スタッフと話し合った結果、ディーンさんに決まったんです。
当初は、ソフトな新次郎さんと対比させるため、五代様はワイルドに行こうかと思っていたのですが、16回の時、洋装で現れた五代様があまりにもかっこよかったので、スタイリッシュ路線に変更しました。
こんなに五代様、五代様と言ってもらえて、ディーンさん自身も人気者になるなんて、想像していませんでした。とてもうれしいです。
――劇中では“立ち聞き”のシーンが多いが、それはどうしてなのだろうか?
劇中では、誰かが誰かの話を立ち聞きするシーンが多いんです。それは、人から指摘されて初めて気がつきました。誰かが温かい目線でこっそり見ていてくれたらいいなという気持ちが私の心のどこかにあるのかもしれません。
盗み聞きというよりは、誰かが「うふふ」と言いながら、見守ってくれている、包んでくれているという温かさが好きなんだと思います。
その温かさを表す立ち聞きの象徴的なシーンが141回にある。縁談破談で落ち込む千代を心配したあさが、彼女の部屋の外で様子を窺う。千代の笑い声が聞こえてくると、あさは安心してその場を立ち去っていく。
当時は、1つ屋根の下にたくさんの家族が暮らしていましたから、あささんにも新次郎さんにも、立ち聞きさせやすかったです。
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取材日は3月中旬。最後の台本を書き終えてから約1か月後のことだった。
「台本を書き直せるなら、1話からまた全部書き直してもいいと思っています。すでにでき上がった台本はすごく愛しているので、第2のバージョンとして書いてみたいです」(大森さん)
大森さんは、登場人物を呼ぶときには、必ず「さん」や「ちゃん」をつけていた。まるで自分の友達や知人について話すように──。
※女性セブン2016年4月14日号