山手線駅の開業記念といえば華やかな式典と話題に包まれると思いきや、2014年に開業100周年を迎えた東京駅よりも古いのに、120周年を迎えた東京都北区の田端駅にはなかなか注目が集まらない。そんな田端を盛り上げようと、自虐的フレーズをユーモラスにとりあげたLINEスタンプや、鉄道の町としてまちづくりをすすめる田端の人たちの取り組みについて、『封印された鉄道史』などの著作があるライターの小川裕夫氏がリポートする。
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山手線で最も地味な駅といわれる田端駅が、2016年4月1日に開業120周年を迎える。田端駅では開業120周年を記念して、昔を振り返るパネル展が開催されている。そのほか、スタンプラリーやウォーキングイベントが実施される。ところが、この記念すべき節目に気づく人は少ない。華やかさに欠けるのは、都民でも田端駅を利用したことがある人は珍しいといわれる利用者の少なさも影響しているだろう。
田端の一日の乗車人員は約4万5000人。JR在来線の数字だけを比較してみても、新宿駅は約74万8000人、東京駅は約41万8000人、近隣の上野駅でさえ約18万2000人。田端駅利用者は、圧倒的に少ない(2014年度。JR東日本調べ)。
そんな田端駅だが、若者たちには欠かせないSNS「LINE」でにわかに注目を浴びている。
今年1月、LINEクリエイターズスタンプ「田端」がリリースされた。同スタンプを制作したクリエイターの櫻井寛己さんは26歳。生まれてから田端を離れたことがない生粋の田端住民だ。
「生まれ育った田端に愛着があり、田端を活性化させたいという思いは以前から強くありました。町内会や商店街に参加して何かをやろうという選択肢もありましたが、週1回の会合に出席しなければならないとなると、シンドイというのが本音です。自由に活動できて、それでいて田端を活性化させるにはどうしたらいいか?と考えました。
以前からLINEスタンプを制作していたのですが、スタンプ制作は手の空いた時間にできますし、スタンプを使ってもらえれば在住者以外にも田端をPRできます。そうした考えからスタンプを制作し、田端を盛り上げようと思ったのです」
櫻井さんが制作したLINEスタンプには、“山手線で一番無名!”“マイナーさはメジャー級”“田端ならNGだよ”といった絵柄もある。もちろん、田端を愛するが故の自虐的なフレーズだ。
「田端をdisっている(※侮辱している)ようにも受け取れるスタンプですが、『田端をバカにするな!』といったお叱りを地元の方からいただくことはありませんでした」(櫻井さん)