色鮮やかな果物や野菜、味噌や漬物など手作りの加工品、民芸品が並ぶ、飛騨高山(岐阜県)の朝市。
「よう来てくれんさった」「今日は暖かくなったでな」。出迎えてくれるのは、「かかさ」(地元の方言で「お母さん」)たちの温かな言葉だ。売り子は農家の女性が多く、笑顔で勧められる自家製の餅や漬物の試食につい手が伸びる。
高山の朝市は毎朝、「宮川朝市」と「陣屋前朝市」の2か所で開かれる。起源は1820(文政3)年頃に高山別院を中心に開かれた桑市とされる。以後、米市、花市となり、場所を変えながら現在のように品揃えが豊富な市に発展した。ともにJR高山駅から徒歩10分程度の距離にあり、多い日にはそれぞれ約40軒が立ち並ぶ。
北アルプスに囲まれたこの地方は水が良く昼夜の寒暖差が大きいため、農産物は甘みと旨みを増す。「新鮮な野菜を仕入れに毎朝、通っています」と話すのは江戸時代創業の料亭『精進料理 角正』の12代目主人・角竹正至さん。
プロも使う野菜や、朴葉味噌などの加工品が手頃な価格で手に入る。通りでは、郷土料理の五平餅や飛騨牛串焼きなどの食べ歩きも楽しめる。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2016年4月8日号