家ではテレビやパソコンと向かい合い、外ではスマホを覗き込む。目が酷使される現代において、がん疾患に悩む人は急増。高齢者となれば、その苦悩はなおさらだ。視界に黒い点や小さな影などが現われる飛蚊症(ひぶんしょう)も、高齢患者に増えている眼疾患の一つ。加齢や紫外線などにより眼球内の硝子体(水晶体の後方にある99%が水分の組織)に活性酸素が発生、タンパク質が酸化して硝子体が濁ることで引き起こされる。
いまだ治療法が確立していないタイプもある飛蚊症だが、眼精疲労が引き起こしているケースもあるため、目の疲労対策が症状改善につながるという。
「吉祥寺森岡眼科」院長の森岡清史氏の話。
「飛蚊症など多くの眼疾患と眼精疲労は、無関係ではありません。というのも、目の中に乳酸など“疲労物質”が蓄積することによって眼精疲労は起きますが、同じく、例えば飛蚊症は硝子体に酸化物などがたまって濁ることで発症しています。
眼精疲労は目を温めることで症状が改善できる。目の周辺の皮膚温を上げることで血流が促進され、疲労物質が除去されるためです。つまり眼精疲労を軽減することが、その他の眼疾患の原因を減らすことにもつながるのです」
皮膚の温度と目の健康の関係を裏付ける実験を行なったのが千葉大学大学院教授の勝浦哲夫氏(環境人間工学・生理人類学)だ。
東京ガスと共同で2012年に行なった実験では、20代の男性10人にパソコン作業を20分行なわせた後、シャワーで目の周辺に温水をあててもらい、視力の回復状態を調査した。
「42℃」「32℃」「シャワーを浴びない」の3つの条件のもと、左右交互に3分間ずつ計6分間、シャワーを当てたところ、以下の結果を得たという。
「32℃のシャワーでは平均0.1ほどしか視力は上がらなかったが、42℃では平均0.3近く上がりました。このことから、温熱刺激が目の疲労(視力の一時的な低下)からの回復に、大きな効果があることが示されました」(勝浦氏)
シャワーではなく、濡れたタオルを電子レンジで温めた後、目の上に乗せるなどの方法でもいいという。
※週刊ポスト2016年4月8日号