ファーストアルバム『Be Happy』がオリコンランキング3位を記録、2003年にNHK紅白歌合戦出場も果たしながら、甲状腺の病気を患い、2010年に惜しまれつつ引退した歌姫・愛内里菜。そんな彼女が、垣内りか(35才)としてドッグブランドを立ち上げ、昨年9月に歌手として復帰した。引退の理由、そして復帰について本人に話を聞いた。
――順調な歌手生活を送っていたのに、なぜ引退することに?
垣内:引退する1年半くらい前から、ずっと悩んでいました。歌詞を書いてメッセージを発信する立場という中で、だんだん愛内里菜を嘘で塗り固めていく、作っていくのが、自分の中で葛藤になっていたんです。
声が出ないのに出るふりをしたり、レコーディングでは期限があるから納得できない歌をリリースする。でも取材では「これは最高です」とコメントする。いろんなところで嘘をつかなくちゃいけない状態になっていました。
でも、そんなやりかたで、愛内里菜を続けている意味があるのかなって。そういう意味でリセットする時間を作りたかったんです。先のことは、まだ何も考えていなかったんですけど。
過呼吸も持っていたので、しょっちゅう病院に運ばれていたんです。これじゃあ歌手の前に、人として潰れちゃうなと思ったので、自分自身を見つめ直す時間が何よりも必要だと思いまして。
――休止という選択肢もあったのに、引退を選んだのはなぜですか?
垣内:活動休止にするのか、引退にするのか悩みました。矛盾してるのかもしれないけど、ライブが一番の楽しみで、歌いがいになっていて。だから、待ってくれる人がいると思うと、そこに引っ張られて、自分を歌から切り離せないんじゃないかなって。
休止にしてしまうと、本当は歌いたいし、体調が良ければライブだってしたいし、待ち望んでくれている愛内里菜になりたいし。後ろ髪がひかれすぎて、休む意味がないというか。だから一度、まっさらにならなきゃいけないと判断しました。
――悩んだ時に、相談した人は?
垣内:母親です。私の体や状況を、言わなくても分かっていたので、「思うようにしたらいいんじゃない?」と言ってくれました。母以外の人には「辞めたらいけない、続けたほうがいい」と言われました。
家族の反対を押し切って歌手になったので、家族には一番、辞めたいと言いにくかったんです。だから家では弱音を吐かずにやっていたんですけど、その時ばかりは、「辞めて、人生を考え直したらいいんじゃない?」って、背中を押してもらえました。
――歌手を引退してから、どんな活動をしていましたか?
垣内:愛犬のパインが、生まれつき膝蓋骨脱臼だったんですけど、立ち上がれなくなったんです。しかも手術をしたことで逆に悪化して、寝たきりになってしまいました。
この子のために時間を使おうと決めて、銀座にある、犬のリフレクソロジーの教室に通いました。フード学、基礎医学、犬のマッサージから躾まで、全部学びました。
――周りの学生から、「愛内里菜だ」と騒がれたでしょうね。