ライフ

なんでも謝罪する社会、とにかく謝らせようとする人々

「とにかく謝れよ!」社会

 なんでも謝る人たちが増えている。それが行き着く社会とは。フリーライター・神田憲行氏が考える。

 * * *
 SNSの世界では「謝ったら死ぬ病」というのがある。自分の発言の事実関係の間違いを指摘されても、絶対に誤りを認めようとしない人たちのことだ。まるで謝ったら即死するかのように、頑なに間違いを認めようとしない。

 逆に「なにがなんでも謝ってもらわないと死ぬ病」の人もいる。たとえば見知らぬ人が「焼肉美味しかった」とつぶやけば、「私は貧しくて焼肉なんて食べられません。あなたのツイートに傷つきました。謝ってください」というような人だ。SNSは自己の承認欲求を満たす装置なので、いずれもフォアグラのように自己を肥大化させた人たちの姿である。

 一方でリアル社会では「なにがなんでも謝らせてください病」が進行しているようだ。週刊新潮で複数の女性との不倫を報じられた乙武洋匡氏のホームページでは、乙武氏だけでなく妻の仁美さんの「お詫び」まで掲載した。なんで浮気された妻が謝っているのか、「このような事態を招いたことについては、妻である私にも責任の一端があると感じております」という一文に、頭の上にでっかい「?」マークを点滅させた人は多い。

 埼玉県で起きた女子中学生誘拐事件では、容疑者が通っていた千葉大学が徳久剛史学長名で謝罪文を公表した。

《このたび,本学工学部の卒業生が,未成年誘拐の容疑で身柄確保されましたことは,誠に遺憾であり,事件の被害者の方・ご家族のみなさまはもとより,世間のみなさまに多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを,心よりお詫び申し上げます。大変に申し訳ございませんでした》

《今後,このようなことがないよう学生への指導に努めてまいります》

《なお,当該者の処分については,卒業取り消しも含め,今後学内で検討していく予定になっております》

 大学が管理責任を負う学内で起きた事件・事故ならいざしらず、学生が学外で起こした犯罪にまで大学は責任があるのだろうか。大学に電話してくるクレーマーのような存在を想定して先回りしたのかも知れないが、「卒業取り消し」はいくらなんでもやり過ぎだ。

 乙武氏の奥さんもそうだが、世間を騒がせたので謝るという姿勢が私にはわからない。

 簡単に謝罪する社会は、簡単に人に謝罪を求める社会につながる。なんか嫌な世の中だなあと感じていたら、やっぱりこんなことが起きていた。

 3月30日の毎日新聞によると、産経新聞社が日本野球機構(NPB)から記事の抗議を受け、施設内の立ち入りを拒否されているというのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン