アメリカは「強い日本」を欲している 共同通信社
ジャパン・バッシャーとして知られた知日派のクライド・プレストウィッツ氏(経済戦略研究所所長)が、「2050年の日本」は新型の超大国として繁栄すると予測した『JAPAN RESTORED(日本復興)』が話題となっている。同書では、2050年に日本のGDPが1位の米国に追いつき、中国の2倍以上の規模になるなどと述べているのだ。しかしそこには特別の意図があると分析する人がいる。外交ジャーナリストで作家の手嶋龍一氏は、この書を「アメリカの現状を映し出す鏡」と読み解く。
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プレストウィッツ氏は、政治学者のチャーマーズ・ジョンソン氏らと共に1980年代の後半に「ジャパン・バッシャー4人組」と呼ばれた一人だ。彼らリビジョニスト(修正主義者)が全盛期にあった当時、NHKのワシントン特派員だった私はプレストウィッツ氏本人に幾度もインタビューをしたことがある。
彼は当時、「第二次世界大戦の真の勝利者は、その後の繁栄ぶりを見れば、アメリカではなく、日本とドイツではなかったのか」と主張し、日本の通貨「円」、そして日本の銀行が世界を席巻すると予想していた。だが、当時の私は、彼の買い被りだと考えた。日本の金融機関にはさほどの実力なしと主張し、事実、その通りになった。
その彼が一転して、日本を称賛する書物を著したと聞いて早速読んでみた。よく読めば、日本について書いてあるように見えて、じつはアメリカを論じている書だとわかるだろう。
冷戦が終わるとともにアメリカの影響力は相対的に落ちつつある。だがアメリカは今後も世界で影響力を持つ存在であり続けたいと考えている。しかし、現実には中国が新興の大国として、経済的、軍事的なプレゼンスを高めている。その証拠に中国は、太平洋をアメリカと二分すると豪語し、日付変更線のこちら側は中国の影響下にと考え始めている。
こうした状況下で、プレストウィッツ氏は、力の空白を中国にではなく、同盟国の日本に埋めてもらうほうが、アメリカの国益に適っていると考えたのだろう。
そのためには日本の現状を改めてもらわなければいけない。安全保障分野での消極的な姿勢を刷新すべしと結論するに至ったのだろう。プレストウィッツ氏は「日本が憲法を改正して、正規の軍事力を保有し、さらに非核政策も改めなければならない」と主張する。