横綱・白鵬の史上最多となる36回目の優勝で幕を閉じた大阪場所。千秋楽から一夜明けた3月28日に行なわれた相撲協会の理事長選では八角親方が貴乃花親方を破って再選を果たした。その2日後、大阪市内で理事会・年寄総会が開かれ、新体制の役職人事が発表された。協会関係者は「貴乃花の処遇」に驚きを隠さない。
「貴乃花親方が『巡業部長』ですよ。内情を知っている人間からすれば、これは露骨な左遷としかいいようがありません。これまで貴乃花親方がやっていた総合企画部長という役職は協会ナンバー3の要職で、今回の人事は明らかな降格。八角理事長もここまでやりますか……」
本誌が詳報してきた通り、八角理事長と貴乃花親方の一騎打ちとなった理事長選は、両陣営が互いを批判し合う泥仕合となった。
3月28日の理事長選は理事10人による互選で行なわれた。八角理事長が尾車親方(元大関・琴風)の推薦を受け、貴乃花親方が山響親方(元前頭・巌雄)に推薦され、候補者を除いた8人の挙手による多数決の結果、6対2の大差がついた。
この数か月間の壮絶な多数派工作も空しく、あっけなく土俵を割った貴乃花親方。ただ、理事長選後の表情には清々しさがあった。報道陣に対し、「支えてくれる仲間がいるので無念でもありますが、礼に始まり礼に終わる土俵の精神と同じ。決着つきました。これからは(理事長に)与えられた役割をまっとうするだけ」と敗戦の弁を述べている。
一方の八角理事長も、「これはこれで終わり。これからは土俵でいい相撲を見せるんだと、(協会が)一丸とならなければいけない。土俵の充実を図っていくのが私の使命です」と“ノーサイド”を宣言。この言葉に、胸をなで下ろした協会関係者は少なくなかった。
「再選後の決意表明を聞いて、八角親方の現役時代の師匠である北の富士さん(元横綱)が貴乃花との間を取り持ってくれたものだと安心していました。角界の御意見番である北の富士さんは、理事長選では八角親方の後方支援に回りましたが、それと同時に“理事長選後は貴乃花と和解すべき”とアドバイスしていたと聞きます」(高砂一門の親方)
ところが、である。2日後の新体制人事発表で、融和ムードは根底から覆された。
「八角理事長と貴乃花親方が本当に和解できているなら、新人事で貴乃花親方はナンバー2の事業部長に“昇進”するか、悪くてもナンバー3の総合企画部長に留任するはずです。
それが、事業部長には尾車親方がそのまま居続け、貴乃花親方は総合企画部長からも外された。巡業部長は各地を回ってファンと接する機会も多いので派手に見えますが、協会運営に携わる要職とはいえません」(前出の協会関係者)
※週刊ポスト2016年4月15日号