「みなさまのNHK」には数々のルールが存在する。それは公平中立であろうという意識から生まれるものだろうが、時に民放と比べると「そんなところにまで規制をかけるの?」といったものもある。
●選挙報道では「モザイク禁止」
選挙報道では、各党党首の街頭演説をニュースで流す。その際、隣にいる候補者の顔や名前の書かれたタスキにモザイクがかけられた映像をよく目にする。公選法上、特定候補が有利にならないようにするためだ。
しかし、NHKはこのモザイクを極力使わないという不文律がある。
「やっかいなのは候補者本人がなんとか映ろうとしてくること。民放はパッとモザイクをかけるが、うちはできる限りカメラ操作や編集で顔や名前がわからないようにするので、毎回苦労している」(制作スタッフ)
●企業名、商品名を「出す/出さない」の境界線
NHKといえば、番組で「企業名、商品名、キャラクター名を使わない」というルールがよく知られている。放送法で他社の営業広告を禁じられているからだ。
そのため、商標である「テトラポッド」を「消波ブロック」に言い換えるなどしている。かつて紅白歌合戦で山口百恵に「真っ赤なポルシェ」の歌詞を「真っ赤なクルマ」と変えて歌わせたほど徹底していた。しかし、現場での運用は変わってきているようだ。
社名で、かつサービス商標でもあるツイッターやフェイスブックを「インターネットの交流サイト」と言い換えていたが、「視聴者に伝わらないという判断で社名をそのまま使うことになった。年に数回、全国の支局のデスク宛にFAXで『用語統一連絡』が伝えられる」(NHK記者)という。
●「スタジアム名」を声に出すのは1回のみ
企業名問題はスポーツニュースにも関係する。問題となるのが商業宣伝目的で命名権が販売された「ヤフオク!ドーム」や「味の素スタジアム」などだ。大相撲春場所の会場である大阪府立体育会館も昨年から「エディオンアリーナ大阪」に変わった。どう対応しているのか。
「命名権ビジネスで名前が変わった施設名はどうしても紹介しなければならない場合のみ、原則、1回だけ読み上げる。それ以降はできる限り固有名詞を口にしないようにしている」(元NHK職員で船橋市議会議員の立花孝志氏)
※週刊ポスト2016年4月15日号