物流の発達で、鮮度抜群の魚が港から各地へ送られるようになった。しかし、そんな現在も、足が早かったり、漁獲高が極端に少ない魚の場合は、地元でしか出回らない。回転ずし評論家の米川信生氏は、地産池消ブームの今、地方の食材こそ面白いという。
「ほぼどの地方の回転寿司店も、地産地消のネタを握っています。でなければ、地元に進出してきた100円回転寿司チェーンと差別化をはかるのは難しいですから。地獲れ・朝獲れの魚を売りにするのは、地方の店にとって至極当然の流れといえますね」
“その土地に行かないと味わえない”プレミア感は、旅の醍醐味である。北海道や北陸は、旅の目的のひとつに回転寿司店巡りも入るほどだ。
なかでも人気の北陸は、新幹線開通時にニュースや情報番組で回転寿司情報を多く取り上げられた影響も大きい。
北海道の生のシシャモやハッカク、夏の三陸のホヤ、東北のメヌケやハタハタ。北陸の冬ならば、香箱ガニ、ガスエビ。駿河湾の桜エビや深海魚。変わったところでは、うずらの卵生産量日本一の愛知県豊橋市のうずらの軍艦など、全国に数えきれないほど地産地消のネタは存在する。
「地元でしか獲れない魚だから、店同士の取り合いになっています」(前出・米川氏)
注目の地方店として米川氏が挙げたのは、岩手を中心に展開する『清次郎』。地元で親しまれている老舗魚店の直営であり、仕入れのノウハウを生かして地産地消に取り組んでいる。たとえば、全国でも人気の三陸穴子を柔らかく煮た三陸自家製煮穴子や、南部鮭燻製ロール、めかぶ軍艦、洋野町活たこ、活ほやなどがある。三陸の美味と出会える“観光地”として、足を延ばす旅行客も多いようだ。
※週刊ポスト2016年4月15日号