マラソン界の“異端児”が駅伝界の“ビッグマウス”に噛みついた。「原監督は箱根駅伝を語るのはいいけど、マラソンについては早いですね」──。3月27日の練馬こぶしハーフマラソンでぶっちぎりの優勝を果たした後、本誌の直撃にこう答えたのは、リオ五輪出場を逃した「最速の市民ランナー」川内優輝(29)。厳しいコメントの矛先は今年の箱根駅伝で2連覇を果たした青山学院大学の原晋監督(49)に向けられていた。
発端は五輪代表選考における原監督の「リオ五輪に青学大ランナーを」発言だ。2月28日の東京マラソンで、10代選手の日本新記録(2時間11分34秒)で日本勢2位に入った青学大の下田裕太(19)について、原監督は「伸びしろは200%ある。将来性を見越して下田を五輪代表の大本命にすべきだ」とブチあげたのだ(結果的に下田は選出されず)。
原監督のビッグマウスぶりはかねてから有名で、「普通にやれば楽勝」「感染症に集団で罹らなければ三冠は取れます」などの挑発的発言で他大学の駅伝関係者をざわつかせてきた。
今回の発言の背景には、原監督が狙う“マラソン進出”がある。4月1日に創設された実業団チーム「GMOアスリーツ」のアドバイザーに就任し、来年のロンドン世界陸上に青学大の若手を選ぶよう提言するなど、その勢いは止まらない。
言いたい放題の原監督だが、近年の圧倒的実績の前に、低迷の続く陸上界は沈黙するばかり。これに応じるのは、「モノ言うランナー」として知られる「彼」しかいないのではないか。
本誌が川内を直撃すると、レース直後にもかかわらず早口でこうまくしたてた。
「(青学の)下田君のタイムは19歳にしては凄いけど、若ければいいってものじゃない。“将来性”なんて不確実なもので五輪選手を選ぶのはどうか。そもそも、私は10回以上も下田君よりいいタイムで走っています! 国内で1~2回しかフルマラソンを走っていない若手選手と違って、世界中で59回ものレースをこなしていて、経験では絶対に負けません」
さらに返す刀で原監督にも批判の声をあげた。
「原監督の発言を聞いて悔しい思いをした実業団選手は大勢いるだろうし、私もそう。今回の東京マラソンはたまたま青学大の選手がハマったのかもしれないが、やっぱり最低でも2時間10分を切らないとダメ。原監督も結果を出した箱根についてなら語っていいけど、マラソンについてはまだ早い」
リオ五輪選考は“痛み分け”に終わったが、川内も青学勢も出場を目指すロンドン世界陸上に向けて“禁断の対決”に火がついた。
※週刊ポスト2016年4月15日号