ベストセラー『下流社会』の著書で知られるマーケティング・アナリストの三浦展氏は、新刊『下流老人と幸福老人』のなかで、「下流老人」の実像を浮かび上がらせた。それによると、65歳以上の高齢者の金融資産総額は平均2772万円だが、1億円以上の資産を持つ上位3.3%の高齢者が資産全体の29.7%を保有しており、人口比率で最も多いのは資産「500万~1000万円未満」(15.1%)だ。
三浦氏はこの金融資産の額をもとに線引きをし、「2000万円以上」を「上流老人」、「500万円未満」を「下流老人」、その中間を「中流老人」に分類している。そして下流老人の割合は34.5%なのだという。
自分はあまり関係ないと思っている人も多いだろうが、「下流転落」は往々にして起こる。その要因として大きいのが、病気やケガによる退職だ。
「40代半ばでがんになり、2年間にわたる抗がん剤治療を余儀なくされ、会社を退職しました。幸いがんは完治したものの、その間に貯金は底をつき、再就職先も見つかりません」(68歳・元会社員)
調査の結果を見ても、その影響は歴然である。
「病気が収入や資産形成に影響を及ぼしたのではないかと調べると、現在の『年収』との相関があった。『40歳以降に大病や大ケガをして仕事を辞めたことがある』人は、調査した65歳以上の男性全体の4.3%だが、年収100万円未満では19%もいました。病気で仕事を辞めると下流老人になるリスクが高い」(三浦氏)
※週刊ポスト2016年4月15日号