2年に一度の相撲協会理事長選で今年、八角理事長(元横綱・北勝海)が再選を果たし、貴乃花親方は敗れた。その2日後に新体制の役職人事が発表され、そこで貴乃花親方の「巡業部長」就任が発表された。協会では理事長をトップに、事業部長、総合企画部長、広報部長の4理事が「執行部」として協会運営に当たっており、巡業部長はそれよりワンランク下とされる。内情を知っている人間であれば、これは露骨な左遷としかいいようがないという。
さらに、「報復」の対象は貴乃花親方一人にとどまらなかった。理事長選で貴乃花親方の推薦役となった山響親方(元前頭・巌雄)は、理事が就く役職の中で最も閑職といわれる「相撲教習所長」に回された。
「教習所は新弟子が6か月間通う研修機関で、各方面の講師を招いて一般常識や四股など相撲の基礎を学ぶ。重要な部署ではあるが、全く表舞台に立つ機会はない」(相撲担当記者)
まさに露骨な懲罰人事に見える。
「一説には山響親方を審判部長に据える構想もあったそうです。審判部長はお客さんの前に出る派手な役回りですが、今度の審判部には錣山親方(元関脇・寺尾)、高田川親方(元関脇・安芸乃島)、浅香山親方(元大関・魁皇)といった元人気力士が居並ぶ。
現役時代の実績や人気のない山響親方がそれを束ねるのは至難の業だから、“罰ゲームにはちょうどいい”という声もあったそうです。結局は教習所長に決まったが、“どうやって懲らしめるか”に主眼を置いて考えられたとしか思えない」(同前)
理事長選で貴乃花親方に票を投じたもう一人の伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)は大阪場所担当部長に就任した。
「理事長選が終わった直後、無言で部屋を出た貴乃花親方に、山響親方はぴったり寄り添っていましたが、伊勢ヶ濱親方はタイミングをずらして出ていった。そうした振る舞いから、すでに八角理事長と手打ちができているのではといわれていました」(高砂一門の親方)
伊勢ヶ濱親方は1月に行なわれた理事改選の際、貴乃花親方のグループから票を回してもらって当選した恩がある。そのため理事長選では貴乃花親方に一票を入れたが、「2年後の理事選では八角理事長サイドに回るという密約を結んだ」(協会関係者)とみられている。
それゆえ、山響親方と違って閑職を与えられることはなかったようだが、前述の通り大阪場所担当部長は理事選の時期に活動が制約される役職だ。
「現役時代に横綱まで昇りつめ、親方としても横綱・日馬富士を育てた伊勢ヶ濱親方は、自分も八角親方や貴乃花親方と同じ理事長有資格者だという自負がある。その野心を警戒する意味もあっての大阪場所担当ではないか」(同前)
やはり貴乃花親方に票を投じた代償は大きかったようだ。
※週刊ポスト2016年4月15日号