『下流社会』で知られるマーケティング・アナリストの三浦展氏は、新刊『下流老人と幸福老人』のなかで、「下流老人」の実像を浮かび上がらせた。三浦氏は、三菱総合研究所による最新のシニア調査や自身が所長を務めるカルチャースタディーズ研究所によるアンケート調査などをもとに高齢者の経済状況やライフスタイルを分析した。
それによると、65歳以上の高齢者の金融資産総額は平均2772万円だが、1億円以上の資産を持つ上位3.3%の高齢者が資産全体の29.7%を保有しており、人口比率で最も多いのは資産「500万~1000万円未満」(15.1%)だ。
三浦氏はこの金融資産の額をもとに線引きをし、「2000万円以上」を「上流老人」、「500万円未満」を「下流老人」、その中間を「中流老人」に分類、その境界線が浮かび上がってきた。なお、下流老人の割合は34.5%なのだという。
上流老人と下流老人には生活スタイルに「境界線」がある。お金がある人ほど、肉をたくさん食べていそうなイメージを持つかもしれないが、実際は逆だということが明らかになった。
三浦氏の調査では、「野菜をよく食べたり、炭水化物を減らした食事をしている」と答えた人は、下流が40.9%なのに対して上流は47.0%。逆に「肉をよく食べる」は下流が19.1%で、上流の16.5%を上回った。上流ほど草食で、下流ほど肉食なのだ。
「外食」の頻度や「娯楽」の種類からも上流と下流の違いが見えてくる。アンケートで上流老人のほうが下流老人よりも「行く」と回答したのが、「近所の喫茶店・ファミレス」(22.6%)、「クラシックのコンサート」(17.7%)だ。下流の場合はいずれも6.4%。逆に下流の男性の回答比率が高かったのは無料で楽しめる「近所の公園」(20.0%)だった。
だが、同じく無料で過ごせる「図書館」に行くのはむしろ上流の人のほうが多かった。「知らない街にもしばしば散歩に行く」という項目でも、下流の8.2%に対し、上流は11.6%。これらの差は知的好奇心の違いといえそうである。
※週刊ポスト2016年4月15日号