『この広い野原いっぱい』『涙そうそう』『さとうきび畑』など、人々に愛される歌を歌い続け、今年デビュー50周年を迎えた歌手・森山良子(68才)。現在でもテレビ、ラジオへの出演、コンサートなど精力的に活動を続けている。決してまっすぐではなかったこれまでの歌手人生を振り返る――。
1967年、19才の時にデビューした森山。デビュー曲『この広い野原いっぱい』は、未来に語り継ぎたい歌として、今も多くの人に愛されている。
「本当はジャズトランペッターだった父(森山久)のように、好きな音楽を好きなように歌うシンガーになりたいと思っていたので、フォーク・シンガーとしてデビューすることには抵抗がありました。私、違うんですって言いながら、でも、当時の大人たちにうまく言いくるめられて(笑い)。新しい時代の波に乗ったような、のみ込まれたような…そんなデビューでしたね」
その後も大ヒットとなった『禁じられた恋』をはじめ、『涙そうそう』、『さとうきび畑』、『あなたが好きで』など、多くのヒット曲を生み出した。日本の音楽シーンになくてはならない存在として、今も輝き続けている森山が、今年、デビュー50周年を迎えた。
「30周年、40周年と比べると、若干しみじみとしたものはありますね。50年? そんなに長く歌ってきたんだ、みたいな(笑い)」
明るく笑みを浮かべる森山だが、その道はまっすぐでも平坦でもなかった。でこぼこに足を取られ、派手にひっくり返ったこともあったはずだ。
「それはそうでしょう。でも、苦労とか苦しみというのは、万人が経験しているもので、私もそれと同じことを経験しているにすぎないんです。日本という世界から見ればちっちゃな国の、そのまたちっちゃなところで生まれた私の悩みなんて、とてもちっぽけなもので(笑い)。悩むことは大切だけど、苦しみはいつか終わるものだし、くよくよしててもしょうがないって思うんです。それに――」
一旦言葉を切り、まっすぐに前を向いた森山はこう続けた。
「私には歌があるから」
※女性セブン2016年4月21日号