国際情報

中国・北京で警官襲撃事件が激増している背景

北京の食堂

 中国社会は経済失速ととともに、治安も悪化している。拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 経済減速が大きな話題となっている中国では、いま最も懸念されるのは社会の不安定化である。そんななか衝撃的なニュースを取り上げたのは『中国新聞ネット』(2016年03月24日 11:37)である。

 タイトルはズバリ〈今年1月からの3カ月間、北京で起きた警官襲撃事件は100件を超えた〉だった。

 統計は3月24日に発表された警察資料によるものだが、それによる24日現在、首都における警官襲撃事件は計109件。この襲撃により重軽傷を負った警官の数は49人に達したというから深刻である。警察が中新ネットの記者に明らかにした具体的なケースは、違法な商売を取り締まる過程で起きたという。

 3月4日、北京市公安局海淀分局花園路派出所勤務の警官が、道路を不法に占拠している露天商の取締りを行っていたところ、一人の果物を売っていた露天商と口論になったというのだ。

 問題はこの「胡」と名乗る露天商が営業許可証をもっていなかったことだった。そのため城管が胡の屋台を撤去しようとしたところ、胡が抵抗。最後には屋台に置いてあった大きな包丁を振りかざし、警官に襲い掛かったというのだ。切り付けられた警官は首に大けがを負ったという。

 記事の中で具体的に紹介されたケースは一つだが、警官が襲われるケースのほとんどはこれと同じように職務の執行中であったとされ、多くは商売の許可をめぐる者だと考えられている。これは、景気の悪化を受けて収入の見通しが立たなくなった人々が苛立ちを募らせていることが背景にあると思われる。

 かつての中国では違法行為があっても失業問題が引き起こされるよりはましとばかりに片目を瞑り、売春さえも見逃してきたとされている。

 だが、習近平指導部の下では法律違反も規律違反も厳しく取り締まられるようになっている。こうした妥協の余地のない習近平スタイルは、政治的には正しくても現実には大きな摩擦が起きることは避けられない。そんな一つの典型的なケースといえるのかもしれない。

関連キーワード

トピックス

指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《10年抗争がなぜ突然?》六代目山口組が神戸山口組との抗争終結を宣言 前兆として駆け巡った噂と直後に投稿された怪文書
NEWSポストセブン
川崎
“トリプルボギー不倫”川崎春花が復帰で「頑張れ!」と声援も そのウラで下部ツアー挑戦中の「妻」に異変
NEWSポストセブン
最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
ショーンK氏が千葉県君津市で講演会を開くという(かずさFM公式サイトより)
《“ショーンK復活”が話題に》リニューアルされたHP上のコンサル実績が300社→720社に倍増…本人が答えた真相「色んなことをやってます」
NEWSポストセブン
依然として将来が不明瞭なままである愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
愛子さま、結婚に立ちはだかる「夫婦別姓反対」の壁 将来の夫が別姓を名乗れないなら結婚はままならない 世論から目を背けて答えを出さない政府への憂悶
女性セブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
通算勝利数の歴代トップ3(左から小山さん、金田さん、米田さん)
追悼・小山正明さん 金田正一さん、米田哲也さんとの「3人合わせて『1070勝』鼎談」で「投げて強い肩を作れ」と説き、「時代が変わっても野球は変わらない」と強調
NEWSポストセブン
行列に並ぶことを一時ストップさせた公式ショップ(読者提供)
《大阪・関西万博「開幕日」のトラブル》「ハイジはそんなこと望んでいない!」大人気「スイス館」の前で起きた“行列崩壊”の一部始終
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
ライブ配信中に、東京都・高田馬場の路上で刺され亡くなった佐藤愛里さん(22)。事件前後に流れ続けた映像は、犯行の生々しい一幕をとらえていた(友人提供)
《22歳女性ライバー最上あいさん刺殺》「葬式もお別れ会もなく…」友人が語る“事件後の悲劇”「イベントさえなければ、まだ生きていたのかな」
NEWSポストセブン