この4月の番組改編期、多くの新番組やリニューアルの番組がスタートした。とくに番組の“顔”となるMCやメインキャスターに注目が集まっている。テレビ解説者の木村隆志さんは、30代後半のイケメンが注目だという。その理由とは? 木村さんが解説する。
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この春、プライムタイム(19~23時)の番組で、新MCに抜擢された顔ぶれを見ると、いずれも30代後半の爽やかなイケメンで、これまで主流だった芸人でないことに気づきます。
1人目は、『7時にあいましょう』(TBS系、月曜19時~)のMCを務めるDAIGOさん(37歳)。「『今、一番会いたい人』に会って人生の答え合わせをする、ご対面バラエティー」というコンセプトの番組だけに、MCとしては正直なリアクションが求められます。
その点、DAIGOさんはまさにうってつけの存在であり、かつて『嗚呼!バラ色の珍生』(日本テレビ系)で島田紳助さんが涙をこぼしながらMCを務めていたようなシーンが見られるかもしれません。
もう1つの注目点は、DAIGOさんの本業がミュージシャンであること。音楽番組以外でミュージシャンがMCを務めるのは極めて珍しく、ロックはなおさらだけに、独自の感性と自由さで、MCの可能性を広げるような気がします。
2人目は、『モシモノふたり~タレントが“おためし同居生活”してみました~』(フジテレビ系、水曜22時~)のMCを務める小泉孝太郎さん(37歳)。「未婚芸能人の“おためし同居生活”をのぞき見する」という番組コンセプトに、「女性との同居経験がない」小泉さんを起用したのは、出演者と同じ目線の率直なコメントを期待してのことでしょう。
また、小泉さんは知る人ぞ知る聞き上手。以前、私が質問をしたときも、さりげなく「これはどう思いますか?」「そうなんですか。それで〇〇は?」と逆質問を返す“穏やかな会話巧者”だけに、コンビを組むバナナマンとのやり取りが注目されます。
3人目は、『報道ステーション』(テレビ朝日系、月~金曜21時54分~)で古舘伊知郎さんの後任を務める富川悠太アナ(39歳)。これまで同番組でリポーターや日曜版のMCを務めた実績があるとはいえ、全国的な知名度は古舘さんに及びません。しかし、12年間さまざまなニュース現場へ足を運んで取材を続けた経験と実績は、古舘さんにはない強みです。
「過不足なく正確に伝える」、ストレートニュースの技術は申し分ないのでしょうが、これからは番組の顔として、どんな一面を見せていくのでしょうか。二児の父親であり、教員免許を持ち、各地の食と物産に詳しく、元高校球児など、多彩な素顔を見せてくれる気がします。もともと「俳優でも通用する」と言われたルックスであり、微笑んだときに見えるキュートな八重歯で、女性視聴者を増やしそうです。
ミュージシャンのDAIGOさん、俳優の小泉孝太郎さん、アナウンサーの富川悠太さんと、ジャンルの異なる3人の共通点は、実績による信頼性と、爽やかなルックスを併せ持っていること。30代後半は若さと実績を兼ね備え、上下の年齢層と向き合って話せる年代であり、フレッシュさのある3人は、春のスタートに最適な新MCと言えます。
ベテランのタレントは、信頼性はあるけど、ルックスの爽やかさが足りない。若手のアイドルは、ルックスの爽やかさはあるけど、信頼性が足りない。つまり、話術の巧みさ以上に、信頼とルックスによる“好感度の高さ”で選ばれていることが分かります。現代のテレビMCは、熱烈なファン層を持つよりも、嫌われにくいキャラクターであることのほうが重要。特に女性視聴者から嫌われる要素のある人は、最初に候補から除外されてしまいます。
「芸人のMCは朝から深夜まで飽和状態であり、新たなMCが誕生しにくい」という背景もあり、今後もジャンルを問わず、30代後半の爽やかイケメンMCが増えるのではないでしょうか。
子役としての活動歴が長いウエンツ瑛士さん(30歳)も、“芸能界の実年齢”としては30代後半に該当すると言っていいでしょう。ウエンツさんもこの春から新番組『珍種目No.1は誰だ!?ピラミッド・ダービー』(TBS系、日曜20時~)のMCを務めるなど、着々と司会の仕事を増やしています。
テレビMCのトレンドは、30代後半の爽やかイケメンへ。男性すら癒してしまう、彼らの活躍に期待大です。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。さらに、タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。