成長を続ける清宮幸太郎選手
春のセンバツが閉幕しても、高校野球がメディアを騒がせている。東京都春季大会(4月1日開幕)で早稲田実業の清宮幸太郎(16)が快音を響かせたからだ。怪童は昨夏からどれぐらい成長したのか──。
全国の地区予選を詳報するなど、どこよりも高校野球情報を網羅するインターネットサイト『高校野球ドットコム』の副編集長で、「高校野球博士」の異名を取る河嶋宗一氏が、清宮の「現在点」をレポートする。
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春季大会初戦となった都立町田戦。清宮は5回裏に特大ホームランを放ち、6回コールド勝ちに貢献した。しかし、私が度肝を抜かれたのは、その直前の一打。一塁側場外へと消えていった特大ファウルだった。
ボールが見つかったのは、試合が行なわれた神宮第二球場に隣接する神宮球場の外野席。「ここまで飛ばす高校生は初めて見た」とベテラン高野連関係者も唸るほどの飛距離だった。
チームは2回戦で都立昭和に敗れたが、その試合でも清宮は4打数2安打とひとり気を吐いた。
3月8日の練習試合解禁から13戦14発(4月6日現在)。184cm、97kgの怪童は昨年より、さらにパワーを付けていた。
昨年、高校野球界は清宮フィーバーで大いに沸いた。日本ラグビー界の名選手であり名監督の清宮克幸氏(ヤマハ発動機ジュビロ監督)の長男として、早実入学当初から注目され、夏の甲子園出場が決まるとフィーバーは過熱。そのなかで清宮は結果を残し続けた。
夏の甲子園、その直後に開催されたU-18W杯での活躍は記憶に新しいところだが、9月の東京都秋季大会でも初戦から3試合連続本塁打を記録。
早実は本大会2回戦で優勝候補の二松学舎大付に敗れたものの、清宮自身は15打数8安打、4本塁打、12打点と圧巻の数字を残した。この成績に和泉実監督も目を細める。
「夏までの清宮は何でも振ってしまう欠点があったが、それがなくなりました。W杯でレベルの高いピッチャーと対決したことで、甘い球を確実に捉える集中力が増したように思います」
1年生から甲子園で強豪校相手に5試合、W杯では世界を相手に8試合も戦った清宮は、私がこれまで取材してきたどの球児よりも成長のスピードが早かった。
●かわしま・そういち/「高校野球ドットコム」副編集長。年間300試合以上の高校野球を観戦し、確かな目で選手を分析する。球児から「高校野球博士」や「スカウト部長」とも呼ばれている。高校野球にまつわるあらゆる情報を集約している高校野球ドットコムにて、強豪校の練習や注目の球児についてコラムを執筆中。
※週刊ポスト2016年4月22日号