人気タレント・蛭子能収さん(68才)が2014年に上梓した、人間関係や友達づきあいについてまとめた『ひとりぼっちを笑うな』(角川書店刊)は、今年10万部を超えるベストセラーになっている。現代の“つながりたい社会”に違和感があったことが出版のきっかけだ。ここでは友達付き合いなどがそれほど必要ないのでは? といった意見を述べている。
もちろん、蛭子さんにも、悲しい思い出やつらい別れはある。最愛の妻を肺高血圧症で亡くしたのは2001年のことだ。東京・平和島の競艇場にいるときに、娘から妻が倒れたと連絡があり、かけつけた時は昏睡状態だった。
30年間、人生を共に歩んできた妻との死別は耐えがたく、「まるで自分の一部がもぎ取られるような」喪失感を抱えたという。しばらくは泣き暮らし、“ひとりぼっちが好き”な蛭子さんが人生で初めて、途方もない孤独に襲われた。
「競艇場から帰っても、勝った負けたと話す相手がいないんです。人と話しても、面白いテレビを見ても、まったく気が晴れなかった。特にさみしいのは、ひとり寝をする夜なんですよ。だから、なりふりかまわず必死で相手を探して、2年後にお見合いで出会った、今の女房と一緒になったんです」(蛭子さん・以下「」内同)
孤独から抜け出すためには周囲からどう見られるかなんて関係ない、そんな強い意志がうかがえる。時には手をつないで寝ることもあるという妻は、子供より大事な存在だという。
「子供は放っておいてもすくすく育つし、ぼくのことをいちばん思ってくれるのは女房ですから。昔からそう思っていました。女房第一で子供たちにどう思われようと、そんなの気にしないですよ。女房からは“よっちゃん”と呼ばれています。ぼくはですねぇ、名前で呼ぶのは照れくさいので、“おい”とか“ねぇねぇ”とか」
争い事が嫌いな性格は家庭でも表れている。妻の趣味だという神社巡りにもつきあい、お賽銭を投げてはふたり並んで願い事をするが、本当は“思うところ”があるのだから。
「女房のわがままをとりあえず聞いてあげる。なんて言ったら、また女房に怒られそうだけど(笑い)。とにかく女房は神社のことは譲らない。お賽銭も最初は10円だったのに、いつのまにか100円になって、今は1000円になってどんどん上がっている。
神様が救ってくれると本気で信じているみたいだけど、ぼくは現実的だから、『いやいや、助けてくれるのは、今お賽銭にするこの1000円だよ!』って言うんです。一応ね。もちろん最後は、『すまん、おれが悪かった』となるんですが」
※女性セブン2016年4月21日号