〈断捨離が流行り、終活という言葉が世を席巻しているが、その前に、今、このときをより豊かに暮らしたいと望む女性がいて、愛情も物質も地位も名誉もほしがったとしても、誰が非難出来るだろうか〉
ノンフィクション作家・工藤美代子さんは、話題の新著『後妻白書 幸せをさがす女たち』で「後妻という生き方」を選んだ女性たちに、そうエールを送った。翻って私たちは、来たる老後にどんなイメージを持っているだろう。ただ楽観するのでも、ましてや悲観するのでもなく、不確定要素が多いことを覚悟しながら、それでも上を向いて、明るく幸せな未来を描きたい。ベストセラーとなった『女性の品格』(PHP新書)の著者で、昭和女子大学学長の坂東眞理子さんが、女の老後について語る。
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40代の頃は、70になったら社会生活から引退し、家族とも離れて出家する生活がカッコいいと思っていました。
でも、いざその年が近づくと、それはできないと痛感しています。やはり人とかかわっていたいし、家族とも愛情を持った関係は続けていたいんです。
とはいえ、距離が近すぎるのも考え物。私にはワーキングマザーの娘が2人いて、どちらも子供が急病になったときなど「今日、面倒見てくれない?」と当然のように言ってくるんです。
こちらも気兼ねなく「今日は用があるから無理よ」と断れるからいいものの、実の親子、それも女同士だと、よくも悪くもお互い遠慮がなく、それが摩擦のもとになりかねません。
ですから、娘たちとは月に数回夕飯を共にするくらいにして、無理をしないようにしています。もし自分が介護を受ける立場になっても、家族ではなくしかるべき専門家に頼ろうと決めています。
夫との関係もつかず離れずがいちばん。よく、定年後、夫との距離の取り方が難しいという声を聞きますが、週に1、2回は夕飯を別に取る日があってもいいんじゃないでしょうか。ぜひ、別行動を取ってみてください。
その時に大事なのは、ひとりを楽しめる能力と、自分から働きかける能力です。これは熟年離婚をしたかたにも言いたい。
例えば、誰かのファンになって、一方的に応援し続けるもよし、地域のイベントに参加してみるもよし。そして、誰かを誘って断られても、めげずにまた声をかけてみる。でないと、どんどん孤立してしまいますよ。
仕事をするのも、有用感を持てるのでぜひお勧めしたい。何かやりたいことができると、老後はむしろひとりのほうが楽しいんじゃないかしら。
※女性セブン2016年4月21日号