ネット発の待機児童問題が社会問題化したことで、ネット署名も、ネットだけでなくリアルの世界でも影響力を及ぼし始めたかのようにみえる。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、数を集められればどんな主張も可能であるかのような最近の傾向に懸念を示す。
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昨今のメディアの文脈においては、「保育園落ちた日本死ね!!!」という「はてな匿名ダイアリー」に書き込まれた日記が多くの待機児童問題に悩む親たちの共感を呼び、国会を動かし、国会前のデモに繋がり、2万7000もの署名を集めてついには政権も待機児童問題に取り組む姿勢を見せた──となっている。まことにめでたいことである。これで諸問題が解決に向かってほしいものである。
しかしながら昨今、「こんなに苦しい」ということについて「数」さえ集めればそれを錦の御旗とし、何を主張しても良いといった論理がまかり通る傾向には若干の懸念も抱いている。今回の件はよかったにせよ、ネット上ではこの「民意の勝利」といった文脈の裏で反対する声も出ていた。それは地方在住者の声である。次のツイートに集約されているだろう。
〈狭いところにぎゅうぎゅう集まって、それで子どもがー保育園がーって言ってたって、地方民から見れば馬鹿馬鹿しくてしょうがないんだよ。そんなに子供預けたいなら地方に来ればいいじゃないか。地方にだって職場はある。都会に固執して、金に固執して、地方から見てると阿呆過ぎてしょうがないんだよ〉
報道では前出の2万7000という数が「大勢の人々の苦しみ」の象徴となっているが、これはもう少し引いた目で見た方がいい。
というのも、これは通常の署名より、もう少しお手軽だからである。この数字はchange.orgという簡単に署名活動を立ち上げられ、誰でも署名可能なサイトのものなのだが、時に困惑するような署名の呼びかけも立ち上がる。「:」の前が、署名の宛先である。
〈TOKYO MX:岡本夏生さんを「5時に夢中!」に復帰させてください〉
〈民進党:山尾志桜里議員を民進党の代表にしてください!〉
〈株式会社ヤクルト球団衣笠社長:スワローズクルーポイント交換を遠隔地でも交換でき配送で届くようにして欲しい〉