この4月から始まる新ドラマには、なぜか不倫モノが多い。栗山千明(31)主演『不機嫌な果実』(テレビ朝日系、4月29日~)、前田敦子(24)主演『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系、4月20日~)、伊藤英明主演の『僕のヤバい妻』(フジテレビ系、4月19日~)。各局の足並みが揃ったのは、偶然か、それとも最近の芸能ニュースを賑わせた数々の不倫騒動を受けてのものか。
元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんはこう述べる。
「ドラマの準備には通常半年から1年かかるものなので、時期的にも今年の騒動が直接関係あるとは考えにくいところですが、実はこのように同じジャンルが重なるのはテレビ業界ではよくあることです。特に重なりやすいのが、刑事ドラマ、医療ドラマ、恋愛ドラマ。そのうちのひとつ、恋愛ドラマは、月9の低調にも現れているように、このところ王道路線が苦戦しています。各局が王道以外の恋愛ドラマで何かないかと考えている中で、『そろそろ不倫モノをやろうか』と思惑が重なったのかもしれません」(碓井さん・以下「」内同)
重なったのが偶然にせよ必然にせよ、やるからにはそれなりの勝算があるということだろう。キャストも意外性のある女優がそろった。前出の栗山千明、前田敦子、そして『僕のヤバい妻』での相武紗季(30)と、不倫ドラマには似つかわしくないイメージの女優ばかりだ。
「不倫しそうにない人が不倫にはまっていく姿は面白いと思いますが、その反面、リアリティーに欠けてしまう恐れもあります。特に前田敦子さんの場合は、恋愛モノというだけでもチャレンジングな印象があるのに、不倫モノというのは階段を飛び越えているという感じがします。この起用が吉と出るか凶と出るかは、蓋を開けてみないとわからないところです。
栗山千明さんの『不機嫌な果実』は、金曜の午後11時台というセクシーな演出も盛り込める時間帯です。ここで中途半端なことをやってしまうと、視聴者はがっかりしてしまいます。セクシー系の橋本マナミさんも出演しますが、栗山さん自身がどこまで見せるかがカギを握るでしょう。
相武紗季さんは女優として今ひとつ抜けてこないですし、伊藤英明さんとの組み合わせもインパクトが弱いので難しいところだと思います。ただ、転換期を迎えている彼女としては勝負どころでもあり、不倫ドラマで新境地を開拓するチャンスともいえます」
どこまで体当たりで挑めるか。彼女たちがひときわ注目されることは間違いないが、ドラマの成否はキャストだけで決まるものではない。重要なのはやはり脚本だ。
「連日の不倫報道に辟易している視聴者に『ドラマの世界でも不倫か』と思われる可能性もあるので、いくら不倫ドラマとはいえ、ドラマとして押さえるべきところがしっかり押さえられているかが明暗を分けると思います。興味関心の持てるストーリーか。登場人物に共感できるか。“読後感”はよいか。不倫を美化しすぎてもいけないし、後味が悪いのもよくありません。
今はほとんどの人がスマホを持つようになって、男女が出会いやすい世の中に変わってきています。不倫というのが、乗ろうと思えば乗れるバスになってしまった。そうした現実をふまえつつ、『こんなの私の周りにもいるよ』、『勝手にやっていれば?』と女性視聴者に思われずに現実を越えていく脚本でなければ、ヒットは難しいと思います」
有名人の不倫騒動がフィクションの遥か先を行ってしまっている中、どういった見せ方をするか。各局の“不倫モノバトル”の行く末やいかに。