近頃、歯に衣着せぬキャラクターで人気の蛭子能収さん(68才)。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京系)では土地の名産を食べずにとんかつを食べるなど、自由気ままな姿が特徴的だ。わがままは控えるが、自分の意志はきちんと通す。それが蛭子さんのモットーだという。
「幼い頃からぼくは、『死なないことが人生の目的』だったんですよ。死んでからのことを考えると、ゾクッとします。死んだら、何もかも終わりだ、と。生まれ変わっても、次は他人として生まれてくるでしょう。だったら、生きているうちは自由に生きたい」(蛭子さん、以下「」内同)
その“自由”なスタイルがみんなに受け入れ始められていた2014年秋、蛭子さんは、認知症予備軍といわれる「軽度認知障害」と診断されていた。日常生活には支障がないが、日付や食べたものなどを忘れやすくなり、半数は4年後に認知症に至るといわれている。
だが、生活習慣改善や投薬などに励み、先月の診断では「格段によくなっている」とお墨付きを得た。さぞかしホッと胸をなでおろしたかと思いきや、当の蛭子さんはといえば、なんだかピンときていない様子。
「いやぁ、たまたま調子がよかっただけですよ(笑い)。物忘れがひどくて女房にも怒られるし。病院で薬はもらっているけど、『ただ薬をのむだけで、これで本当に大丈夫かな?』とか、思っちゃったりして。介護される立場になったら周りに迷惑をかけないように、遠慮しながら、小さくなって生きていかないといけないんですかね…。
でもね、介護する人が自分の幸せを犠牲にする必要はないと、ぼくは思っているんです。だって、ぼくが何より大切にしてきたのが“自由”だから。『お互いの手を煩わせることがあったら、殺してもらっていいよ』と女房と話し合って、夫婦で尊厳死の登録もしているんです」
認知症になったことで、「死というものをリアルに考えるようになってきたんだよね」と漏らした蛭子さん。でも、嘆いたところで寿命には逆らえない。だからこそ、明るい気持ちで、自分のやりたいことに素直に生きると決めている。
「不安があっても楽しい時間は持ち続けたいし、いつも心は明るくいたい。いちばん楽しい時間は競艇ですね。実は半年ほど前に、人生最高の配当を当てたんです。27万円の舟券ですよ! 300円が81万円になりました」
そう語ると、ここいちばんの輝く笑顔を見せた。楽しいこと、やりたいことはやっぱり趣味のギャンブルだ。
「仕事ではこれといって自分から何かをやりたい欲求はないんだけど、今後の夢としては、全国24か所の競艇場を制覇したいな。まだ下関だけ、行っていないんですよね。競艇場巡りだけはやってみたいなぁ」
そして自分のやりたいことは譲らない。それもモットーだ。
「よし、今日は競艇に行こうと思ったら、友人から『おい、山登りに行こう』と言われても、『すまん!』と断ります。すごく謝るけれど、相手が気分を悪くするかを考えるより、自分のやりたいことを優先します。そこは昔からブレていない」
※女性セブン2016年4月21日号