日本から9000キロ以上離れたモンテネグロ。3月26日、この東ヨーロッパの小国で55人のロシア人に加え、日本人4人が現地警察の特殊部隊に拘束された。
4人は、オウム真理教(現アレフ)の信者と見られ、公安調査庁も「アレフの日本人信徒が拘束されたものと把握している」と認めた。公安調査庁関係者がいう。
「ロシア連邦保安庁から『ロシア国内でマークされているオウム信者が大量に出国した』との情報提供がモンテネグロ側になされたようだ。4月5日にロシア国内で25のオウム関連施設が一斉に捜索を受けたのも、布教活動の高まりを牽制しての動きと見られている」
オウムは1995年にロシアで宗教法人登録が抹消され、活動が禁止された。しかしいまだに50以上の拠点があるとされ、信者数は若者を中心に増加しているという。1999年には武器調達・爆弾製造を行なって教祖・麻原彰晃死刑囚の奪還が計画された(シガチョフ事件)。公安調査庁は「アレフ、およびオウムの流れをくむひかりの輪のロシア国内における現勢力は160人ほどとみている」という。
日本の捜査当局が拘束された日本人信者について調査を進めた結果、その中に「超高学歴の理論派」がいたことが判明した。
「アレフの大阪支部長を務めていた50代半ばの東京大理学部数学科卒業者、同じく50代半ばの京都大理学部卒業者がいた。地下鉄サリン事件の頃から、オウムの幹部は東大、京大、大阪大など最難関大学出身者で占められていたが、そうした信者が今も残っている。兵器製造から綿密な計画立案に至るまで、あらゆる形でテロ行為を行なうことができる頭脳が存在しているといえる」(公安関係者)
地下鉄サリン事件から21年。日本国内では恐怖の記憶が薄れていく一方で、海外では不気味に勢力を拡大する元オウム。逮捕された4人が海外でどのような活動をしていたかの解明が急がれる。
●取材協力/時任兼作(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2016年4月22日号