日本では衆参ダブル選に向けた風が吹き始め、米国は4年に1度の大統領選が熱を帯びている。そんな世界的「選挙イヤー」の口火を切る韓国の総選挙(定数300。4月13日投開票)が大混乱に陥った。与党セヌリ党内で朴槿恵(パククネ)・大統領と距離を置く「非朴派」が相次いで非公認となったのだ。公認なしで出馬を強行した非朴派に対し、党中央が容赦なく刺客を放つ──日本や米国の選挙戦がお行儀良く見える、「恨(ハン)の選挙戦」をレポートする。
産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は選挙情勢についてこう述べる。
「朴政権のやり方に『やりすぎ』との批判も起こり、朴氏の“城下町”といわれる大邱(テグ)の一部の選挙区でも、野党系や非朴系候補が予想外に優勢と報じられています」
韓国総選挙の結果は、日韓関係にも暗い影を落とす可能性がある。韓日議員連盟会長代行を務めてきた金泰煥(キムテファン)議員は高齢を理由に党公認を得られず、無所属で立候補。同氏は今年1月に来日して安倍晋三・首相とも面会しており、議員外交の要の位置にいた。
本誌の取材に対し金議員は「これからも韓日関係の改善に積極的に取り組みたい」と回答したが、当選しなければ活躍の場は与えられない。
日本での勤務経験も長い外交官出身で、数少ない知日派の沈允肇(シムユンジョ)氏は公認から外れ出馬を断念した。一方、同じ外交官出身の金鐘勲(キムジョンフン)氏が公認を得たが、対日姿勢は沈氏と正反対。昨年4月には安倍首相の米議会演説に合わせ、現地で従軍慰安婦問題の看板を掲げる“愛国パフォーマンス”を行なった人物だ。公認は、そうした反日活動への論功行賞だろうか。
このような事態となっているのは、来年に韓国大統領選が迫っていることと無関係ではない。韓国では大統領の再選は禁じられており、朴氏の任期は残り2年を切った。朴氏としては、退任後に非朴派が主導権を握ることを是が非でも避けたい事情がある。