参院選を前に国会で「ガソリン代」をはじめとする政治資金問題が取り沙汰されるなか、安倍晋三首相に近い、政治資金を監視すべき総務省の松下新平・副大臣にも事務所費を巡る「ヤミ企業献金」疑惑が浮上した。
相場では月額25万円の物件に事務所を構えておきながら、政治資金収支報告書を調べると、松下事務所が支払っている家賃は月額5万円+税となっていた。相場より安い家賃で入居していれば、差額は物件を所有する企業からの「金銭によらない寄付」にあたるため、政治資金規正法違反の疑いが出てくる。この件について、松下事務所は取材に対し、「家賃を支払っている賃借部分は2階フロアの4分の1弱の面積であり、壁で仕切って事務所としている。相場より格安で借りているという事実は全くありません」と回答。
しかし、地元事務所で働いていた複数の元秘書は「薄い壁で仕切られていたが、フロア全部を松下事務所が使えた」と証言している。
こうした証言に加えて、松下事務所内で議員と秘書のトラブルが絶えないとの証言を得た。元私設秘書が語る。
「松下議員の考えは『秘書は24時間365日オレを支えるもんだ』というもの。運転手役だった秘書など、ブレーキをちょっと強く踏んだり、議員の思っていたルートを選ばなかったといっては、後部座席から運転席をバンバン蹴られていました。それでいて、議員の奥さんの買い物などの送り迎えにも駆り出されるから、不満が溜まっていた」
別の元公設秘書は「航空チケットは2週間以上前の割引料金で予約するが、当日に急な予定変更があった時も『特割で買え』などと無理難題が次々とあった。たまりかねて意見した秘書が、あの大きな体に突き飛ばされ、床に倒されたこともありました」と嘆く。別の元公設秘書はこんなケースを語る。
「ある秘書が辞める日に、議員とスタッフに一斉送信メールで『やって見せ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かず』という山本五十六の言葉を送り、暗に議員の事務所運営を批判した。そうしたら議員が怒って、自宅まで追いかけて文句を言おうとしていました」
強烈なキャラに秘書たちは振り回されていたようだ。議員要覧で確認できる範囲だけで、松下事務所では2期目の6年間に公設秘書が9人、事務所を去っている。松下事務所はトラブルについてこう回答。
「秘書の退職理由は様々ですが、いわゆるパワハラに該当するような事実は全くありません。家族のプライベートな送迎というのも事実ではありません。夫人は常日頃から議員に代わり会合などに出席し、挨拶回りなどを頻繁に行っている」
※週刊ポスト2016年4月22日号