中国では3月に入って、中国の最高指導者、習近平国家主席の辞任を求める公開書簡が相次いで発表されるなど「辞めろコール」が止まらない。習氏が進める個人崇拝やメディア規制の動きにも知識人の間から強い不満が噴出しており、独裁色を強める習指導部への風当たりが強くなっている。
4月初旬、習氏の辞任を求める公開書簡が米ニュースサイト「明鏡新聞網」系のブログに掲載された。投稿したのは「171人の中国共産党員」で、「習同志の独裁と個人崇拝が党内組織をひどい状態にしている」と批判したうえで、中国共産党に「習同志を一切の職務から罷免し、党と党員を救済するよう要求する」と訴えている。
この書簡は投稿主が自らすぐに削除したもようだが、ネット上で一気に拡散した。
これに先立って3月4日、新疆ウイグル自治区主管のニュースサイト「無界新聞」に「習近平は辞職せよ」と勧告する謎の書簡が掲載された。この書簡の主の正体は不明だが、「忠実な共産党員」と署名し、習氏を独裁者と呼んで、経済運営の失敗を批判している。
この事件で注目されたのは、書簡の発表が年に1回しか開催されない全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)の前日に発表されたこと。全人代は全世界からメディアが集まるほか、国内でも最も注目される国家行事だけに、この書簡の目的は、中国内で習氏への反発が強まっていることを表している。
このため、中国当局も事態を重視し、この事件に関与したとして20人以上が逮捕され、その家族も身柄を拘束されているという。
中国の最高指導者である習氏の辞任を求める声が立て続けに公になるのは異例で、強まる言論統制への反発との見方が出ている。
これを裏付けるように、広東省にある「南方都市報」の文化面編集者が3月下旬、自らの辞職届を撮影して投稿した。これは習氏が2月下旬、中国共産党機関紙「人民日報」などを視察した際、中国メディアの「姓は“党”である」と発言したことに反発したためで、この編集者が辞任理由について、「あなたたちの姓は名乗れない」と書いて、中国共産党に誠意を尽くせとの習氏の意向に強い不満を表明している。
その後、「党の喉」の代表的な存在である中国国営新華社通信が3月中旬、配信した記事の中で、習氏の肩書を「中国最高指導者」とすべきところ「中国最後の指導者」と間違え、訂正していたことが明らかになっている。このミスで記者1人と編集者2人が停職処分となったという。
記事などの編集作業や校閲作業が厳しいことで知られる新華社通信の編集者がこのような単純だが重大なミスを見逃すことは通常考えられず、香港や台湾のメディアのなかには「故意に間違えた」との見方を示す向きもある。