国内

スマホは1人遊びで完結 社会性の発達には向いていない

 4月23日は国際的に「本の日」といわれているのをご存知だろうか? 日本でもこの日は、「子ども読書の日」とされている。しかし、日本の読書率は年々低下し、全国大学生活協働組合連合会が2月に発表した調査では、「本をまったく読まない」と答えた大学生の割合が45%を超えた。

 その一方、「ネット時代に紙の本なんて時代遅れだ」という声もあるかもしれない。たしかにスマホを使えばありとあらゆる情報を入手できるし、わざわざ本を置く場所を取らなくても、ネットなどで購入したデジタル書籍は端末にデータを保存できる。

 だが、東京都在住の主婦・A子さん(53才)は不満顔だ。

「ウチの娘はわからない単語をすぐネットで検索します。私は小さいとき、わからない言葉や表現があったら、必ず母に聞いていました。そこで母とやりとりをして物事を覚えたんです。それが無駄といえばそうなんでしょうけど、そこであ~でもない、こ~でもないと言いながら、辞書を持って来て一緒にページをめくったものです。娘を見ていると、ちょっと寂しい気持ちになります」

 デジタルで便利になった分、「子供の言葉によるコミュニケーション能力が貧困になった」と指摘するのは、絵本作家で公益財団法人文字・活字文化推進機構理事長の肥田美代子さんだ。

「最近は家の中でもスマホで会話する、と聞いてびっくりしました。活字とデジタルは共存できますが、あまりデジタルに偏るのはどうか。紙の絵本を大人が1枚1枚めくりながら、子供と一緒に読んでいく時間はとても大事です」

 LINEやツイッターなどSNSの「短すぎる文章」に警鐘を鳴らすのは精神科医の和田秀樹さんだ。

「若い世代がSNSで短い文章に慣れてしまい、長い文章を読む経験をしていないのは怖いことです。ぼくの短めのブログさえ、高校生や大学生は『長くて読めない』と文句を言います。短文SNSの一行情報だけで納得していると読解力が育たず、物事の全体像や裏側にある複雑な事情を把握できなくなるおそれがある。幼い頃から長い文章を読む習慣は大切です」

 ネットでの情報収集が当たり前になった現在、本棚のない家も増えているという。家族の本棚を見て、理由もなくふと本を手に取り、自分の知らない世界に足を踏み入れる。

 あぁ、父は頑固で厳しいけど、人情家なんだ。専業主婦の母はいつも脳天気でお調子者だけど、意外に女の生き方に熱い思いを持っていたのか…そんなことを考えながら、読書にふける経験は失われつつあるようだ。『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「賢い子」に育てる究極のコツ』(文響社)著者で、東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授はハイテク時代にこそ「アナログ」な経験が必要と指摘する。

「スマホは“1人遊び”で完結するため、コミュニケーションや社会性の発達に向いていません。デジタルはすべてバーチャルだけど、紙の本には厚さや重さといった“リアルな体験”がある。ゆえに読後に達成感があり、“これだけ読んだ”という自信にもつながるんです」

※女性セブン2016年4月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

SAGAスタジアムで国民スポーツ大会を観戦する愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、初の単独公務で佐賀県へ 手漉き和紙工房では「紙、できてます?」 国スポや佐賀城もご見学し、刺激と感動たっぷりの2日間 
女性セブン
物議を醸した兵庫県の風俗店に勤務している女性(Xより)
《批判殺到でX投稿を削除》しゃぶしゃぶ店で丸出し女性が〈どっち食べる〜??〉ニットたくし上げ胸露出 店舗側は「法的措置も含め厳正に対応する所存」
NEWSポストセブン
かつて「週刊ポスト」に“アイドル愛”を熱量高く語ったことも
キャンディーズ、麻丘めぐみ、岡田奈々…石破茂首相が『週刊ポスト』で語った“私が愛したアイドルたち” 「売れていない時代に一生懸命応援する」のが真骨頂
週刊ポスト
急逝した俳優の西田敏行さん
晩年は病魔と闘う日々だった西田敏行さん「どう命をたたむか毎日考えている」「死を考えることが幸せ」東日本大震災で紡ぎ出された独特の死生観 
女性セブン
近藤真彦×三原じゅん子 還暦を迎えた2人のスペシャル対談!
【対談・近藤真彦×三原じゅん子】“金八”時代を振り返る「生徒役の中でもずば抜けて美人で“あのにおい”にやられてしまった」
女性セブン
シャンパンファイトでクレイトン・カーショー投手と肩を組んで満面の笑みの大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、初のポストシーズンで“感情爆発”シーン カーショーと肩を組み満面の笑み、カメラに向かって大口を開けてニコニコ顔も 
女性セブン
経営者の”ズンちゃん”ことズオン・ティ・ミン・ホン容疑者(28)。20代にしてやり手の女社長だ
《ベトナムガールズバー摘発》28歳美人社長”ズンちゃん”はクルーズ楽しむほどの羽振り アオザイ着たキャストの“おねだり営業”で4億円以上売り上げ
NEWSポストセブン
どんな内容なのか?(元テレ東・池谷実悠アナのファンクラブサイトより)
元テレ東・池谷実悠アナ、月額2.7万円「超高額ファンクラブ」のスゴい特典内容 会員の名前を呼ぶ「メッセージ動画」も
週刊ポスト
旧5人のメンバー。左から石崎琴美、吉田知那美、吉田夕梨花、鈴木夕湖、藤沢五月(時事通信フォト、Loco Solare)
《消えたロコ・ソラーレ功労者の現在》“切実な事情”でチームを去ったメンバーがカーリング離れて「病院勤務の専属職員」に転身
NEWSポストセブン
10月17日、東京・世田谷区の自宅で亡くなった西田敏行さん
誰からも愛された西田敏行さん 大御所然としたところはなく誰に対しても物腰柔らか「ご近所さんから講演を頼まれてもふたつ返事でOK」 
女性セブン
失踪報道が出たピーコ
《おすぎとピーコの老老介護その後》荒んでいった生活…ピーコさん「おすぎとは違う施設に」と望んだ理由
NEWSポストセブン
急逝した俳優の西田敏行さん
西田敏行さん急逝 外出中に一報を聞いた妻は「自宅にいれば…」と憔悴 来年1月期にはドラマ出演も決まっていた 
女性セブン