小さな山や丘に囲まれた平野に広大な田畑が広がる。点在する民家の合間には、まだ残る桜がはらはらと花を散らせ、風に乗って牛舎のにおいが鼻をつく。香川県三豊市三野町。のどかな田園地帯に建つ一軒家を訪れると、長身の男性が姿を現した。
「すいません。今は心が痛すぎて…。本人ともまだ話ができていません。ただ残念なだけです…」
憔悴しきった表情で言葉を絞り出したのは、バドミントン選手・桃田賢斗(21才)の父親だった。
男子バドミントン選手の裏カジノ賭博問題が波紋を呼んでいる。今夏のリオデジャネイロ五輪でメダル獲得が有力視されていた桃田は、2012年のロンドン五輪代表である田児賢一(26才)に誘われて東京・墨田区の違法カジノ店に何度も出入りしていた。
誰よりもこの事件に衝撃を受けたのは、桃田の家族だった。憔悴しきった父親に代わり、続いて桃田の祖父が女性セブンの取材に応じた。
「誰がどう言ったって本人の不徳のいたすところ。自業自得や。パチンコや競輪競艇とは意味が違うんやから。地元に後援会ができたばかりなのに、ただただ申し訳ない」
祖父は開口一番、強い口調で孫の行為を非難した。2才上の姉の影響で小2の時にバドミントンを始めた桃田はすぐに頭角を現し、小6で全国小学生選手権のシングルス優勝。中学からは福島県の名門校に単身越境入学した。
「当時、家族一同で反対したんやけど、本人は“どうしても行きたい”って譲らんかった。小さいときから素直な子じゃったけど、この時だけは“もう、じいちゃん好かん”とまで言い出してな。男の子はかわいいから、地元から離れるのは寂しかったよ。でも最後は本人の意志を尊重して、応援することに決めたんや」(祖父)
郷里の家族からの支援を受け、桃田は今や世界レベルの選手に成長した。祖父は今年の正月、里帰りした桃田とも会っていた。
「“体に気をつけて頑張れよ”とだけ声をかけました。負担かけんように、オリンピックの話はせんかった。あの子は“みんなありがとう”言うてまた帰って行ったんよ。あれからまだ3か月しか経ってないっちゅうのに、こんなことになるなんてな…。小さい頃からオリンピックを目標にしていたけど、今回はもう本人が悪い。東京オリンピックまで丸4年あるし、そこまで現役を続けられるかどうか、ワシにはわからん」
祖父によれば、桃田の母親はショックのあまり寝込んでしまい、食事も喉を通らない状態だという。
※女性セブン2016年4月28日号