2016年4月3日、2.6テラバイトにも及ぶパナマの法律事務所によって作成された機密文書「パナマ文書」が公開され一部の内容が報じられて以来、日本でもタックスヘイブン(租税回避地)やオフショア金融センターへの関心が高まっている。ドメスティックな鉄道会社とタックスヘイブンには縁遠いように思えるが、鉄道運行のために浅からぬ因縁が生じていた。ライターの小川裕夫氏が、不思議な縁が生まれた理由を解きほぐす。
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世界には、税金が著しく低率だったり、免除されたりする国や地域がある。そうした国や地域はタックスヘイブンと呼ばれる。今般、世界を騒がせているパナマ文書は、世界各国の政治家たちが国民には課税を強化する一方で、自身の資産は守ろうと秘密裏にオフショア金融センターを利用して英領バージン諸島などのタックスヘイブンへと資金を移していたことを明るみにしたため、大きな問題となっている。
タックスヘイブンそのものに良いイメージがないかもしれないが、納めるべき税金を納めた後の移動であれば、それは資産を有効活用していることになり、責められるような内容ではない。
パナマ文書とは直接関わりがないが、かつて、大阪を本拠地とする大手私鉄・阪急電鉄(阪急)もタックスヘイブンのひとつとして知られる英領ケイマン諸島に資産を移していた。その資産はなんと、鉄道車両だった。
2002(平成14)年、阪急は所有車両のうち、8300系という車両をケイマン諸島の会社に84両譲渡した。そして、ケイマン諸島の会社はリースという形で阪急に貸し付けていた。なぜ、そんなややこしいことをしているのか?
「もう10年以上前の話なので、今になっては詳細不明です。聞いたところですと、車両をケイマン諸島の会社に譲渡したのは、資金調達の多様性や有利子負債の抑制を目的としていたようです。ただ、契約期間は5年だったので、2007(平成19)年に当該車両は買い戻しております」(阪急広報部)
海外から車両をリースする形をとっていたケースは阪急ぐらいしか見当たらないが、車両を別会社からリースしていた例は他にもある。