プロ野球選手の野球賭博に始まり、今度はリオ五輪で金メダルが期待されていたバドミントン選手にまで賭博の関与が発覚。しかし、なにも彼らが特別だったわけではない。有名人たちが足繁く通うという裏カジノは、どうやって入ることができ、どんな場所なのか。
東京・渋谷の雑居ビル。その地下1階にある裏カジノ『S』の経営者・斎藤純二氏(仮名)は、本誌記者の取材に意気揚々と答えた。
「うちのカジノでは、パチンコや競馬といった公のギャンブルでは考えられない額のカネが動く。最低の賭け金は1万円だが、客の懐事情によって200万円まで上がることもある。これだけのカネがかかると、勝った瞬間の高揚感ったらない。
バカラは1勝負せいぜい1分。負けてどん底まで落ち込み、勝って天まで上る快感が短時間で何度も押し寄せる。激しく感情を動かされるほど、人はのめり込んでいく」
彼の言うように高揚感にハマってしまったのが、バドミントン日本男子のエースで今年のリオデジャネイロ五輪への出場が有力視されていた桃田賢斗(21)と2012年のロンドン五輪代表の田児賢一(26)だった。
約50万円負けたという桃田は、日本バドミントン協会から無期限の試合出場停止処分が下され、リオ五輪出場が消滅。60回以上足を運び、総額1000万円もつぎ込んだと告白した田児は、無期限の協会登録抹消という更に厳しい処分を受けることになった。彼らの人生を狂わせた裏カジノとは、いかなる場所なのか。捜査関係者がいう。
「もちろん違法ですが、全国の都市に存在しているのが実情です。東京だけでも、歌舞伎町や渋谷、六本木、赤坂、銀座など大小合わせると約100店舗あると言われています。雑居ビルの一室にスナックなどを装って店を構えているケースが大半です。東京以外では、神奈川の横浜や川崎、大阪のキタやミナミ、福岡の中洲に裏カジノが集中しています」
警察の摘発から逃れるため、店舗周辺には防犯カメラが設置され、見張り役が警戒の目を光らせている。
扉を開けるともう一つの扉が設置されている二重扉構造の店舗も多い。店舗が入るフロアにはエレベーターが停止しないよう、細工してあるところもある。電話連絡すると設定が変更されて当該フロアに停止する仕組みだ。当然、一見の客は入店できない。
「裏カジノに入るには、特別なルートが必要です。田児選手は客引きに誘われたと証言していますが、嘘ではないか。紹介制が一般的で、特にスポーツ選手はタニマチに連れられて来ることが多い。また、高級クラブのホステスが紹介役になるケースもあります。自分の客に賭けさせて、賭け金の1割程度をマージン(紹介料)として受け取るのです」(同前)
裏カジノで行なわれている賭博は、バカラが圧倒的に多い。バカラとは「プレイヤー」と「バンカー(胴元)」に配られたカードのどちらが強いかを予想するゲーム。単純ゆえ多くのギャンブラーがハマるという。
賭場は最低の賭け金によってレベル分けされており、レート(平均賭け金)が低いテーブルには、サラリーマンや大学生もいるという。
※週刊ポスト2016年4月29日号