4月上旬以降、商社マンたちの間で話題なのが、三井物産と住友商事の“合併情報”を報じた、月刊誌『文藝春秋』(5月号)の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」だ。同コラムには、次のようにある。
〈ここにきて業界筋でしきりと飛び交っているのが、三井と住友商事との合併観測だ〉
〈一部では「新会社の社名は『三井住友商事』になるのか、それとも『住友三井物産』か」といった気の早い話まで取り沙汰されている〉
実現するなら旧財閥の壁を越えた業界大再編となる仰天話だが、意外なことに、名前の挙がった両社の中には“あり得ない話ではない”と受け止める社員が少なくなかった。2期連続で決算見通しの大幅な下方修正を迫られた住友商事の40代社員は危機感を滲ませる。
「経営や資本が本当はどこまで傷んでいるか、社員にはわからない。ある日いきなりニュース速報で『物産が住商を吸収』と出ても、それほど驚かないと思う。
4月に入って、2018年秋に本社を現在の晴海(東京・中央区)から大手町(同・千代田区)に移転するという社内発表があった。大手町には三井物産の本社もあり、移転先とは2ブロックほどしか離れていない。社内では“また一歩、物産に近づくね”という自虐ジョークが出るほどです」
数年前まで、不況関係なしの安定収益を誇った大手商社だが、急激な資源安が収益を圧迫している。
業界ツートップの三菱商事と三井物産は3月下旬、相次いで業績見通しの下方修正を発表。2016年3月期は両社とも発足以来初の赤字に転落する(三菱が1500億円、物産が700億円の赤字見通し)。住商も一足先に2015年3月期で731億円の赤字に転落している。総合商社「冬の時代」の到来を受け、再編の観測記事が出たというわけだ。