「人が生きるためには言葉の力が必要です。それは読む・書く・話す・聞くという4つの力です。これらの力は、幼い頃の読書体験で身につけることができます」
こう話すのは、絵本作家で公益財団法人文字・活字文化推進機構理事長の肥田美代子さん。近年の研究で、読み聞かせが子供の脳の発達に大きな影響を与えることがわかってきた。さらに特筆すべきことがある。幼い頃から旺盛な好奇心を身につけていれば、高齢になってからの「認知症予防」にも役立つというのだ。
「幼い頃から好奇心が高い人ほど年を取ってから脳が萎縮しづらく、ハイレベルな脳の機能が保たれやすい。つまり、本を読むことで好奇心を養えば、生涯にわたって健康でいられる可能性が高くなるのです」(東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授)
本を読むことで、長生きもできるというのだ。実際、若い頃からの読書習慣で成功した人は多い。
たとえばNHK連続テレビ小説『あさが来た』のヒロイン・あさのモデルである広岡浅子は睡眠時間を削って禁じられていた読書に励んだ。「なんでどす?」――小さい頃からの彼女の口癖はまさに好奇心のかたまりで、それが成功を導いたともいえる。
同じく朝ドラ『花子とアン』のヒロイン・花子のモデルである村岡花子は、『赤毛のアン』を何度も何度も読み返した。後年彼女が同書を翻訳した際のこの一文は、パルピテーション(ときめき)がいっぱいつまっていた。
《曲がり角を曲がった先に、何があるのかは、わからないの。でも、きっといちばんよいものにちがいないと思うの》
肥田さんがアドバイスする。
「作家の井上ひさしさんは、生前『親が楽しそうに本を読む後ろ姿を子供に見せなさい』とおっしゃっていました。親が本を好きならば、子供も必ず本を読むようになるはずですよ」
子供は親が楽しんでやっていることをしたくなる。まずは親のあなたから、本を読む姿を子供に見せてみませんか?
※女性セブン2016年4月28日号