リオ五輪で金メダルが期待されていたバドミントン選手の人生を狂わせたことで、注目を集める「裏カジノ」。取材を進めると、決して彼らが特別だったわけではないことが明るみになった。関西で裏カジノを経営する小池隆弘氏(仮名)は、ギャンブル狂のスポーツ選手を多数目撃している。
「Jリーグで甘いマスクで人気のディフェンダーが、当時、所属していたチームの同僚選手たちを引き連れて来店した日のことを覚えています。練習帰りなのか、ジャージ姿の彼らは10人前後で来ていました。バカラにはプレイヤーとバンカー(胴元)のどちらが勝ったかを記録する専用の紙があるのですが、彼らは博打の傍ら、その紙の裏にフォーメーションを書いて、次戦の作戦を立てていました」
バカラは伏せられたトランプを客がめくることで勝敗を明らかにする。このめくる行為は「絞る」と呼ばれ、もっとも緊張感が漂う瞬間である。
この「絞り」に命をかけているのが、都内のカジノ店に出入りする現役の力士だ。東京・渋谷の雑居ビルで裏カジノを軽視する斎藤純二氏(仮名)が言う。
「彼は絞る時に、あまりに強い力を込めるのでバカラ台が揺れるんです。ある時、“もう少し穏やかにプレイしてください”と注意したら、“自分は死ぬ気で相撲をとっていて、バカラも死ぬ気でやってますから”と返されました。彼だけでなく、バカラ好きは絞りに魂を込めると、カードが良い手に変わると思い込んでいて、だから力を込める。もちろん普通にめくっても変わりませんけど(苦笑)。
結局、その日、現役力士は200万円の負け。“負けが込んでいる時は、相撲にも集中できなくて黒星が続く”と言っていた通り、その場所は散々な結果でした。負けっぷりが豪快だったといえば、元メジャーリーガーもそう。カネがなくなると、電話で“2000万円持ってきて”と付き人を呼び出していた。そのカネも朝方には溶けてなくなり、浅黒い顔が蒼白に変わっていた(笑い)」
西日本のプロ野球の人気球団に所属するイケメン内野手、賞金王にも輝いたプロゴルファーらは、前出の小池氏の店に頻繁に出入りしていたという。
「京都で店をやっていた時は、隣の滋賀に厩舎があることもあって競馬騎手の来店も多かった。彼らは横柄で、負けが続くと“なんで逆の手ばかりなんだよ”とディーラーに絡むこともありました」(小池氏)
※週刊ポスト2016年4月29日号