4月14日にスタートしたNHK連続ドラマ『鼠、江戸を疾る2』(毎週木曜午後8時~)に滝沢秀明が出演中だ。滝沢は2014年の第一弾に続き、悪人から千両箱を盗んで貧民に分け与える鼠小僧を演じる。この鼠小僧役、過去に何人もの大物俳優が演じている。タッキー鼠小僧は彼らとどう違うのか? コラムニストのペリー荻野さんが解説する。
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タッキーの鼠小僧が帰ってきた!というわけで、元気よく続編がスタートした『鼠、江戸を疾る2』。二年前にパート1が放送されて以来、パート2を望む視聴者が多く、巻紙のような嘆願の手紙まで届いたという。それを受けての続編開始だ。
昼間は遊び人の次郎吉、夜は江戸の町を騒がす鼠小僧(滝沢秀明)は、武家屋敷から奪った金を貧しい庶民にばらまく義賊。彼を追う岡っ引きの徳五郎(高島政宏)は「今日という今日は逃がさねえぞ」「相変わらず逃げ足が速えな、この野郎!」と鼻から機関車の蒸気のような鼻息を噴射しながら追いかけてくる。この追っかけっこはおなじみの場面だ。
先日、NHKの『スタジオパーク』に出演した高島本人によれば、この徳五郎親分のモデルは、『ルパン三世』の銭形警部らしい。その銭形警部のご祖先祖は時代劇の主人公でもある『銭形平次』という捕物名人の岡っ引き。つまり、これってある意味先祖返り? 言葉の用法間違ってますね。
それはさておき、滝沢の鼠小僧といえば、まず思い浮かぶのは、月をバックにすらりと立ったシルエットの美しさ。そして、高速の屋根走りだ。もちろん今回もやってくれる。第一話のファーストシーンから、黒装束のまま、千両箱を抱えて屋根の上をすすすすっと突っ走る滝沢。斜度があり、滑りやすい屋根瓦を素早くきれいに走るのは、実際かなり難しいのだが、滝沢はパート1で走法を会得。先日出演した『土曜スタジオパーク』では、「今では瓦を見ただけで『この瓦は危ないこの瓦は大丈夫』とわかるようになった」とにこにこと語っていた。
まさに芸能界一の屋根疾走男、と言いたいところだが、実は現在、もうひとり屋根疾走男がいる。
TOKIOの松岡昌宏だ。年に一度ペースで出演を続ける『必殺仕事人』シリーズで、松岡演じる経師屋の涼次もまた屋根走りを得意とする。滝沢鼠、最大のライバルである。さらに時代をさかのぼると、意外なライバルも出てくる。鼠小僧は過去にいろいろな名優たちが演じているのである。
朝ドラマ『マッサン』で毛皮を来たガハガハおやじを演じた風間杜夫は80年代の終わりから90年代にかけて足かけ三年、鼠小僧を演じていたし、同じく朝ドラマ『あさが来た』でヒロインの祖父役だった林与一も映画やドラマで二枚目の鼠小僧だった。極めつきは、70年代はじめにに小川真由美が主役を務めた『女ねずみ小僧』シリーズ。その相棒の男ねずみは、初代が田中邦衛で二代目が三國連太郎だったのだ。
今では想像もできないが、かつては田中邦衛はアクション分野でもずいぶん活躍していた。『ルパン三世』実写映画で次元大介を演じたのはよく知られている。屋根走りもなかなかに素早かったのだ。対して三國ねずみはやっぱり重鎮の貫録が…。
20世紀のOB鼠と21世紀の滝沢鼠との決定的な違いは、盗人の顔だ。過去の鼠たちは黒手ぬぐいを頭に被り、ねじった部分を鼻の下に通す伝統のほっかむりスタイルだが、滝沢鼠は髪はポニーテールで顔の下半分を黒い布で覆うマスク形式。ほとんど目しか見せないところは心憎い。滝沢鼠も田中・三國の大御所鼠と並べられては困惑だとは思うが、先輩に負けないよう屋根の上を華麗に突っ走ってもらいたい。