ネットを独自にパトロールし「不謹慎だ」と注意してまわる人たちが増殖している。ネットスラングで「不謹慎厨(ふきんしんちゅう)」と呼ばれることもある彼らの行動は熊本地震発生以後、とくに活発化している。不謹慎厨の彼らがよくターゲットにするのは、芸能人など知名度がある人のSNSアカウントだ。
女優の長澤まさみは14日の夜、インスタグラムへ笑顔の写真を投稿したところ、投稿時刻が地震発生直後ということだけで「不謹慎」などとコメント欄に書き込まれ、投稿を削除した。モデルで女優の西内まりやは、福岡出身ということもあり被災地へ向けて応援メッセージや情報提供をTwitterで繰り返していたが、自撮りを添付した投稿に対して「不謹慎」だと批判を浴び、一部の投稿を消去した。モデルのダレノガレ明美は、地震関連情報を積極的にリツイートしたところ「指だけ支援か」と一部のネットユーザーから攻撃され炎上したが、「何を言われようと発信してきます」と今も130万人を超えるフォロワーへ向けリツイートを続けている。
「最近は自然災害が起きると、必ずそういう騒がしい人がネットにあらわれる。そういう人たちの『不謹慎』の基準って、はっきりいってよくわからない。どの人もしつこくて面倒な人ばかり。不謹慎だといいたいためだけにTwitterのアカウントをとり、リプライを投げる。個人的にもそういうアカウントは片端からスパム報告しています」(20代女性・会社員)
残念ながら、スパム報告は受けつけられるが、それでアカウントがすぐに停止することはまずない。
5年前の東日本大震災のとき、首都圏を中心にあらゆる物事に自粛ムードが広まった。テレビから流れる番組がすべて何日も震災特番であることに嫌気がさし、震災情報を目にせずにすむ教育テレビやテレビ東京で気持ちが救われた。そして大規模イベント等が中止されるだけでなく、一般市民はレストランや居酒屋へ行くことすら控えたため消費が低迷する悪循環が生まれた。
そのため今では、堀江貴文氏が指摘したように、直接被災していない人間は、普段通りの生活をしながら支援をするのが災害時のあるべき姿といわれている。ところが、ネットにたびたびあらわれる「不謹慎厨」はおさまる気配がない。
「僕は東日本大震災の被災地出身ですが、3月11日が友だちの誕生日だったらお祝いくらいしますよ。それを探し出して、わざわざ文句を言いに来るネットの不謹慎厨はどうかしている。『不謹慎』という言葉で世間がそう思うからやめろという言い方をするんじゃなくて、自分が気に入らないからと正直に書けばいいのに。卑怯ですよ」(19歳・男子大学生)
ネットに増殖する「不謹慎厨」はどう扱えばよいのか。
「まったく相手にせず無視するのが一番です。通知が止まなくてうるさいというなら、通知設定をオフにすればいい。彼らの本音は騒ぎたいだけ。『不謹慎だ』というためだけの匿名アカウントをつくってまでやってくる。そして、度を越したクレーマーぶりが顕在化したら、こまめに運営へ通報してください。砂漠で水を撒くような気持ちになるかもしれませんが、塵も積もれば山となるので、あきらめずに繰り返してください」(IT誌ライター)
理不尽極まりない要求を企業などに対して繰り返すクレーマーへの対処方法も、ある程度、形になるまで時間がかかった。不謹慎厨を封じこめられる日も、遠くないだろう。