政府は少子化対策のため、「婚活」に対する支援を本格化する方針だが、中には金の授受を巡って、結婚詐欺を疑われるようなケースも存在する。金を渡した彼女が「もらっただけ」と主張した場合、これは結婚詐欺なのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
付き合っていた彼女に、一緒に住む家をリフォームしたいので「お金をお願いします」といわれ、400万円を手渡すと連絡が途絶えました。友人が彼女を見つけ問い詰めると「私は『結婚』の言葉を使っておらず、お金に余裕のある人からもらっただけ」と主張。これは完全に結婚詐欺ではないでしょうか。
【回答】
結婚詐欺とは、結婚する気がないのに結婚するように信じ込ませ、誤信した異性から金品を騙し取る詐欺の手口の一つであり、刑事事件にもなります。男女関係を背景にして、多額のお金のやり取りがあった場合、結婚詐欺と思われるケースに遭遇することが時々あります。
あなたの場合、女性はお金をもらったことは認めていますが、現金で渡して領収書もなく、証人もいない場合、もらっていないと、とぼけられてしまうと、お金の授受の証明が難しくなります。
さらにお金をもらった方は、借りただけで事情があって返せないだけだから詐欺ではないとか、彼女のように、もらったが結婚するとはいっていないという反論をしたりします。どちらにせよ、結婚で誘ったかどうかが問題です。
最近は携帯メールの履歴から立証できることが少なくありません。結婚詐欺の被害者は、お金を出し続けるうちに気になってメールや手紙で相手に両親への面談、結婚式や新居の予定などを相談し、これに対して、その場しのぎの言い訳をするメールが返されることも多いのです。彼女が結婚という二文字を注意して使わなかったとしても、一緒に住むといったのであれば、結婚を示唆したといえます。
ここまで追い詰めても、結婚するつもりだったが、愛情が薄れたと反論される例もあります。これに備え、相手の親族関係や生活状況を調査し、配偶者や子供もいて同居生活していれば、最初から騙すつもりだった疑いが濃厚になります。もっとも、結婚を種にお金を騙し取られたと、あなた自身が考えていることが大前提です。
いずれにせよ、渡したお金の額や目的、交際の経過を時系列で整理し、メールの履歴なども添え、二人の関係が結婚前提のことを知っている友人がいれば、同道してもらい警察に相談してください。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2016年4月29日号