出版した写真集は217冊、雑誌も含め撮影したモデルは4000人以上──。写真家歴40年以上の渡辺達生氏が、女優・アイドルとの忘れられない撮影秘話を明かす。
渡辺氏のレンズに収まるのは、時代を代表する女性ばかり。デビュー直後から撮影を担当したモデルも多い。中でも渡辺氏が「抜群に可愛かった」と絶賛するのが、宮沢りえである。(以下、「」内の発言は渡辺氏のもの)
「デビュー直後の小学6年生の時、後藤久美子と2人で出演したキットカットの広告から撮っている。その後、ゴクミが交代することになって、代わりの子を探したんだけど、釣り合う子がいなかったんだよね。それくらい圧倒的な存在感だった。
変な表情が偶然写ってしまうことがなくて、失敗がない。でも素顔は普通の10代の女の子だったよ。『今度、とんねるずを撮りに行くよ』と何気なくいったら、『大ファンなんです。サイン貰ってきてください!』とお願いされたことがあったっけ」
同じくデビュー当初から写真に収めたのが斉藤慶子だ。JALのキャンペーンガールに選ばれた1982年から撮影し、1990年には写真集も手掛けた。
「からっとした性格でべたべたしていない。良い意味で女っぽくなく、話しやすい子だった」
Fカップバストを武器に、グラビアの寵児としてデビューから瞬く間に人気を博した優香も同様。
「とにかくよく笑う子だったね。冗談をいっても、真面目なこといっても最後に必ず笑う。名前を呼んだだけなのに、鼻の上にシワを寄せて笑ってるんだ。現場が明るくなるんだよ。家に1人ほしいね(笑い)」
渡辺氏は優香の写真集を計3冊制作している。
「時代は21世紀に入る直前で、カメラもフィルムからデジタルへ移行する転換期だったから、よく覚えている。優香はその両方で撮った。初めてデジタルを使ったらあまりに面白くて、もう1冊出そうと現場で決まったんだ。1つのロケで2冊作るって後にも先にもないね。それも、優香という被写体がそうさせたんだと思うよ。
デジタルが主流になった今は現場ですぐ写真を確認できるけど、フィルム時代は不可能だった。だからお互い緊張感があったよね。それに最近は後から修整できるけど、当時はごまかしがきかない。だから、みんな必死に体を作る努力をしてくれたし、覚悟を決めていたね」
※週刊ポスト2016年4月29日号