今年の阪神ファンは金本知憲・新監督(48)の熱血采配に「負けてもワクワクする!」と大絶賛の嵐である。もっとも、「ヤバイくらいにコワイ」と評される監督の指導に選手は大変なようだ。それは、ゴメスやメッセンジャーといった選手に対しても盗塁指示をベンチから出すなど、あまりにも容赦のない采配ぶりに現われている。
3月31日のヤクルト戦では5対5のまま延長に突入。9回からマウンドに送ったクローザーのマテオに3イニング61球も投げ続けさせた。
「新入団のマテオについては、他球団のスコアラーたちもデータ収集に苦労していたんです。ところが、シーズンが始まって日も浅いこの時期にセオリー無視で61球も投げて丸裸にされた。ライバル球団のスコアラーからは“これで阪神の優勝はなくなった”という声が出るほど」(全国紙阪神番記者)
金本監督は投手に「スパルタ」を強いる傾向がある。4月1日の横浜DeNA戦に先発した能見篤史は、8回まで3安打無失点と文句のつけようのない投球だったが、1点リードで迎えた9回、先頭の横浜の四番・筒香嘉智に左中間スタンドに運ばれて同点。さらに走者を出し、代わった歳内宏明が打たれてサヨナラ負けを喫した。
「結果論とはいえ、リードしていた9回のマウンドへ能見を送り出した采配を疑問視する向きは多い。開幕直後からこの総力戦では、今後の長いペナントレースが心配になる。阪神は、夏の甲子園期間中に“死のロード”が控えている。それまでに選手たちが音を上げないか心配ですよ」(同前)
阪神元監督の野球評論家・藤田平氏はいう。
「今は上手く機能している若手が落ち込むことも絶対に出てくるし、チームも壁にぶつかるだろう。問題はその時に、いまベンチで危機感をもっている中堅やベテランが補えるかどうか。金本監督の“誰もレギュラー安泰ではない”という焦りを与えるやり方は、選手たちにはプレッシャーだろうが、きっと正しい方向にチームを導くはずです」
「虎は千里往って千里還る」というが、死のロードを無事に折り返して優勝というゴールまで帰ってこられるか──かくして今日も「総力戦」は続いている。
※週刊ポスト2016年4月29日号