4月17日にスタートした『OUR HOUSE』の初回視聴率4.8%の大惨敗。人気子役・芦田愛菜とシャーロット・ケイト・フォックスのダブル主演で放送前から話題を集めていたが、ふたを開けてみればこの春ドラマで最下位の成績となった。いったいなぜこんな結果に? テレビ解説者の木村隆志さんが指摘する。
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『OUR HOUSE』は、フジテレビが3年ぶりに日曜21時のドラマ枠を復活させた鳴り物入りの作品ですが、その意気込みが裏目に出ています。
同作には、芦田愛菜さんとシャーロット・ケイト・フォックスさんのダブルヒロイン、堀北真希さんとの「交際0日婚」が話題となった山本耕史さんに類似の設定、加藤清史郎さんや寺田心さんらスター子役の集合、脚本・野島伸司さん+演出・永山耕三さんのレジェンドスタッフ、主題歌にオフコースの『愛を止めないで』など、「これでもか!」というほどのトピックが用意されました。
しかし、これはあくまで企画書上の話。ズラリそろえたキャストやスタッフは実績こそあるものの、「今が旬」という強烈な力で牽引する人がいるわけではなく、それぞれが足し算になっていません。その点、松本潤さんという強烈な牽引役を立てた裏番組の『99.9%-刑事専門弁護士-』(TBS系)とは対照的です。
また、内容も「中学1年生の少女vs外国人後妻」という思い切った変化球の『OUR HOUSE』に対して、『99.9%-刑事専門弁護士-』は「法廷モノに刑事モノの要素を加えた」直球とこちらも対照的。放送前からの違和感に加え、愛菜さんが巻き舌で「うっかり八兵衛」「寝た子を起こすな」などの昭和風セリフをまくし立てるほど、シャーロットさんが英語混じりのカタコト日本語で話すほど、制作側の過剰な意図を感じた視聴者は多い気がします。
変化球以上に厳しかったのは、60年の歴史を持ち『半沢直樹』『下町ロケット』(ともにTBS系)など常に直球勝負でヒット作を連発する『日曜劇場』に“対等の投げ合い”を挑んだこと。直球に対抗するためには、七色の変化球を用意するのではなく、むしろ「いったん負けを認めた上で、脱力して投げる」下から目線のスローボールが最適でした。かつて、『日曜劇場』の大作『JIN-仁-』(TBS系)にのらりくらりとついていった『マルモのおきて』(フジテレビ系)は、まさにスローボールであり、決して変化球ではなかったのです。
特にドラマファンは、3年前にフジテレビの『ドラマチック・サンデー』が、TBSの『日曜劇場』に大差をつけられて撤退したことを覚えています。やはりドラマ枠復活の編成そのものが苦しかった部分は否めませんし、対等目線での勝負はリスクが高かったのではないでしょうか。
今や「視聴率は1つの指標」という認識になりつつありますが、初回からここまで低調となると、キャストの精神状態が気がかりです。相変わらず愛菜さんのセリフ回しは達者であり、主演女優の佇まいそのもの。また、子役4人の会話シーンは微笑ましいホームドラマのそれを感じるだけに、脚本・演出をスッキリさせるなど変化球を抑えることで、多くの人が見やすい作品になってほしい……と願っています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。さらに、タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。