フランスの地方都市で、ヘラクレス像のアソコが何者かに持ち去られる珍騒動が起きた。笑い話のような出来事のなか、大人力コラムニスト・石原壮一郎氏は「大人の教訓がたっぷり詰まっている」と力説する。
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フランスの南西部にあるアルカション市。温暖な気候の保養地として知られ、美しい砂浜が広がる海水浴場が人気です。いや、もちろん行ったことはありませんが。
そんな素敵な街の公園にあるヘラクレスの裸像が、とんだ災難に見舞われました。裸像なので、当然アソコも丸出しです。ヘラクレスといえばギリシャ神話の英雄であり、性豪としても有名。あやかろうとしたのか妬ましかったのか、ある日、アソコの部分が何者かにもぎ取られてしまいました。フランス版、阿部定事件です。
幸い、なくなったアソコは町中のフリーマーケットで発見され、市当局はそれを17ユーロ(約2100円)で買い戻したとか。そのまま無事に元の股間に戻されましたが、取れやすくなってしまったこともあり、酔っぱらいなどにたびたび持ち去られてしまいます。そのたびにアソコを懸命に探し回った市当局でしたが、とうとう我慢の限界を越えます。
盗難を防ぐために、アソコにネジを埋め込んで取り外しができるように改造。ふだんは市で保管しておいて、記念行事など特別な日だけ取り付けることにしました。ツイッターに投稿された写真を見ると、股間から小指ぐらいの長さの細いネジが突き出しているヘラクレス像は、心なしか寂しそうです。
余談ですが、何度も盗まれた性豪のアソコは意外に小ぶりで、いわゆる皮をかぶった状態でした。さすがギリシャ神話の英雄、後世の私たちに勇気を与えようという配慮がその形状に込められているに違いありません。
着脱式にすると発表したときの市長のコメントが、さすがエスプリとユーモアの国だけあって秀逸です。
「ヘラクレスの、男としての誇りが危険にさらされているという現在の状況を憂慮し、取り外し式のパーツの導入を決定しました。私は、このヘラクレスを含めたすべての男性に、こんなことが起こってほしくないと切に思っております」
たしかに、こんなことは起こってほしくはありません。股間の問題だけに、男としてのコケンに関わる問題です(この慣用句を市長に教えたかった!)。
今回のヘラクレス像の股間盗難騒動は、私たちにさまざまな教訓を与えてくれます。なんせ性豪のアソコだけに、同じ場所でじっとしているのは耐えられなかったと考えられないでしょうか。「外で遊びたい!」という情念が高じたのか、アソコだけが街をブラブラと放浪してしまいます。
身元引受人というか、いわば伴侶のような立場である市当局も、何回かの出来心は許してくれました。しかし、ちょっと調子に乗り過ぎたようです。「盆と正月だけは使わしてやる!」と言われて、アソコの自由を完全に奪われてしまいました。かわいい子には旅をさせよと言いますが、かわいいムスコに旅をさせ過ぎるのは禁物です。取り返しのつかない事態というか、取り外しのできる事態にならないように気を付けましょう。