NHKスペシャル取材班による書籍『老後親子破産』(講談社)が話題を呼んでいる。作中では高齢の親世代の介護や、収入が不安定な子供世代によるパラサイト同居により、シニア世代に危機が訪れると警鐘を鳴らしている。そして、親子同居には、最低限の生活が立ち行かなくなったときに受けられるはずの国の補助が受けられなくなるという「落とし穴」もある。
前掲書『老後親子破産』には、体の悪い父のために、息子が同居を始めたことによって生活保護が打ち切られてしまったケースが紹介されている。北海道に住む50代男性は失職して収入がなくなった後、年金と生活保護で暮らす80代の父親を頼り、同居を開始した。
だが、親子同居を始めると「生活保護を廃止する」という自治体からの通知書が届いた。息子の日雇いアルバイトの仕事が多かった月に稼いだ収入が「世帯収入」として計上され、「生活保護支給の必要なし」と判断されたのだ。しかし安定しない日雇いバイト生活では、生活保護カット分の穴埋めはできない。親子の預金残高は312円になり、夕食はそれぞれ食パン1枚という生活まで“転落”した。
この親子が住む札幌市厚別区の担当課長が「一般論」とした上で説明する。
「一般的に世帯の収入が生活保護水準として国が定める最低生活費を上回ると、自立した暮らしが可能とみなされて生活保護の支給ができなくなります」
生活保護の廃止は単なる受給の停止にとどまらず、それまで免除されていた毎月2万円の市営住宅家賃や医療費を支払う義務も生じることになったという。
※週刊ポスト2016年4月29日号