2月、高市早苗総務大臣(55才)は、「テレビが政治的に公平性を欠いた報道をすれば、電波停止もありうる」と発言し、波紋を呼んだ。これはつまり、“政府に都合の悪い放送をすればテレビ局の電波を停止する”という、電波停止権を持つ総務省の横暴な発言。
「全く勘違いの発言」と言うのは、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんだ。
「高市さんは放送法4条2項を根拠に発言しているのでしょう。放送法には、テレビ局に“政治的に公平であること”を求める文言があって、総務省に電波停止権があるのは事実です。でもこれは、たとえば選挙があったときに特定の候補者や政党の個別の事情だけを一方的に取り上げたりしないということ。政府を批判してはいけないということではありません」
4月1日にはテレビ報道を検証する任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」が、TBSに対し放送法違反を突きつけた。昨年放送された安保報道について、“反対意見の報道に大半を費やしている”ことを問題視したのだ(TBSはすぐに抗議文を発表)。
政府の政策について、“おかしいのではないか”“間違っているのではないか”と疑問を呈した報道にすら“公平性”が求められては、この国の制度上、必要な「政治を検証する」というメディアの役割はなきものになってしまう。
「私たちは消費税、所得税、住民税などさまざまな形で多額の税金を国に納めています。それが政府にちゃんと使われているかを有権者の代わりにチェックするのが、マスコミの役割です。
それは“高齢者に3万円の給付は本当に正しいのか”といったように、時に政権批判になることもありますが、政治的な不公平とは次元が違う話です。高市さんはその違いを全くわかっていない」(鳥越さん)
政権からの“脅し”は電波停止発言にとどまらない。
この4月、報道番組のメーンキャスターがガラッと入れ替わった。3月末までに降板したのは『報道ステーション』(テレビ朝日系)の古舘伊知郎氏(61才)、『NewS23』(TBS系)の岸井成格氏(71才)、『クローズアップ現代』(NHK)の国谷裕子氏(58才)と、どれも“安倍政権にとって不都合なコメントや報道内容”を行うと“目をつけられた番組”といわれている。
「報道各社のトップは安倍さんと会食して懐柔されてしまっているのでは? また、高市さんによる電波停止という脅し、恫喝もそうですし、政府が経団連に呼びかけて番組スポンサーが降りて広告料収入が断たれるというようなことがあれば、局にとっては痛手です。社の雰囲気として政権の批判はしづらくなっていて、その空気は現場まで伝わっています。テレビ局が委縮して、政府に対してはっきりものが言えなくなっているのです」(鳥越さん)
※女性セブン2016年5月5日号