熊本地震の原因となった活断層は日本中いたる所に潜んでいる──。熊本地震発生のメカニズムについて武蔵野学院大学特任教授で地球物理学者の島村英紀氏が解説する。
「熊本地震は明らかに活断層地震です。前震が深さ11km、本震も12kmと震源が浅い典型的な内陸直下型で、地震波が減衰しないまま地表に到達したため、甚大な被害を招いたと考えられます。
活断層地震は揺れる範囲は狭いものの震源が浅く、到達までの時間が短いため、緊急地震速報が役に立たない」
6434人もの死者を出した1995年の阪神・淡路大震災も活断層が引き起こした地震である。海底のプレート境界がずれ、強い揺れを広範囲にもたらす海溝型地震だった2011年の東日本大震災とは発生のメカニズムが異なる。
地下の岩盤がずれた場所を断層というが、その中でも地震の発生源となり得るものを「活断層」と呼ぶ。
「日本では約2000の活断層が発見されているが、そのうち110か所ほどを政府の地震調査委員会が危険性を調査するにとどまっている。だが専門家の間では、さらに未知の活断層が6000ほどあると推察されている」(前出・島村氏)
活断層の長さと内陸地震の規模には相関関係があり、活断層が長ければ長いほど地震の規模を表わすマグニチュードは大きくなる。事前に活断層の存在や規模を調査することが急務であるように思えるが、それは非常に困難だという。
「調査は重機を入れて大規模に掘削するトレンチ法で行なうが、都心部で実行するのは現実的に難しい。
東京や大阪、名古屋などの大都市は河川の土砂や火山灰などが堆積してできた土地が多く、それに覆われて活断層が見えづらい。どこに活断層があってもおかしくないのです」(島村氏)
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2016年5月6・13日号