日本では7000万人以上いると言われる老眼は、「目の老化現象」であり、病気ではないため一度なると治らないと思われている。だが、簡単な方法で改善は可能である。
その中には、100円ショップでも売っている「+2度老眼鏡」で1日5分、100メートル先を見るトレーニングや、対向車のナンバーを読み取ったり、片目をつむってペンのキャップを挿したりして動体視力を鍛える方法など様々ある。
自力で回復するのもいいが、思いきって手術で一気に解決したいという人もいるだろう。最新の老眼手術は短時間で手軽に済むものが増えている。近年、手術件数が増えているのが、白内障と老眼の両方を改善できる「遠近両用眼内レンズ」を用いた手術法である。神戸神奈川アイクリニック理事長の澤井循暉氏の解説だ。
「“遠く”と“近く”に焦点が合う遠近両用レンズを眼球内の水晶体と入れ替える手術で、10分程度で終わります。まず眼球の正面を覆う角膜の縁をメスで約3mm切開。白濁化した水晶体の核の部分を超音波装置で吸引し、代わりにレンズを挿入し、白内障と老眼を改善させるというものです」
この手術が画期的なのは、両眼に新しくレンズを入れることで生涯にわたって安定した視力を維持することができる点だという。費用は70万円前後からとなり、「生命保険の先進医療保険特約が使えるケースもある」(澤井氏)という。
さらに手頃な料金で老眼治療できるのが「リーディングアイ」だ。直径3.8mm、厚さ5ミクロンのコンタクトレンズより薄くて小さいリング状のプレート(カムラインレー)を角膜内に挿入。プレート中心部には1.6mmの穴が開いているため、ピンホール効果によって近くのものが見えやすくなる。
世界約50か国で導入されている同治療を6年前、いち早く日本で取り入れた品川近視クリニック副院長の湯川聡氏が話す。
「遠くの視力を維持したまま、近くの視力を改善できるのが最大の特徴です。プレート表面の8400個の極小の穴が、角膜への酸素や栄養の補給を促し、目の負担を軽減します」
レーザーによる手術時間は10分程度。入院の必要もなく、費用は約30万円となっている。老眼は治す、これが現代の常識なのだ。
※週刊ポスト2016年4月29日号